マニア増殖する、「知的書評合戦」 ビブリオバトルの魅力とは?
同店は、バトル開催後数日間、紹介された本の展示コーナーを設ける。推進チームの瀬部貴行さんはこう話す。
「ネットの発達で、本屋で紙の媒体を売るのが難しい時代。本屋に足を運ぶ楽しさをアピールしたい。ビブリオは一般の人が一般の人に本を薦める、今までなかったソーシャルリーディング。本来、読書は孤独な営みですが、ビブリオは本を通してコミュニケーションを図る楽しさがある」
この日、バトルに立ち寄ったさいたま市在住の会社員の感想は、「初めてビブリオを見ましたが、パワーポイントを使わないのがいいですね。本の内容をいかに解釈して自分の言葉だけで伝えていくか、そこが面白い」。
生みの親は理系人間
ビブリオバトルの生みの親は、立命館大学情報理工学部の谷口忠大准教授。現在、ビブリオバトル普及委員会の理事・代表も務めている。谷口准教授は、根っからの理系人間。京都大学大学院工学研究科でコミュニケーション能力の研究を行った後、2007年に情報学研究科に移り、組織のコミュニケーションについて勉強会を始め、使用する本を探すために考え出された方法がビブリオバトルだった。谷口准教授は立命館大学に移ったが、口コミや動画サイト、ウェブページを通じてじわじわ広がった。谷口准教授は話す。
「年に8万以上、本が洪水のように出版される時代。以前はランキングや著名人の推薦といった、ある意味での権威を信じて読む本を決めてればよかったわけですが、今は読者が能動的に本を選んでいく時代だと思ってます。またウェブなどで、消費者が自分の考えを発信するようになった。そんな変化が、普通の人が面白いと思った本を紹介する、ビブリオバトルというゲームが広がる素地になったのではないか」
ルールはシンプル
ビブリオバトルのルールは、いたってシンプルだ。配布資料やスクリーンは使わず、話だけで5分間ひたすら本の面白さを伝える。大学生対象のビブリオバトル首都決戦から、有志数人が居酒屋で開くものまで規模や形式はさまざまだ。学校、図書館、会社、書店などで広がっている。話す訓練になり、プレゼン力は仕事にも役立つと感じる人が多い。
留学生の日本語力向上のために取り入れているのが、室蘭工業大学国際交流センター(北海道)だ。指導する山路奈保子准教授は「普段の会話は相手が手助けするが、ビブリオは5分間、自分一人で発表せざるを得ない。日本語の良い訓練になる」と話す。
勝者になったネパールからの留学生スレスタ・スリ・クリスナさん(27)は、海外の学会で英語発表する時も、ビブリオで培ったプレゼンのノウハウが生きたという。