「ペットと住めるグループホーム」の真価とは 精神障害者の置かれる状況は「待ったなし」

拡大
縮小

みんなから「たっちゃん」と呼ばれている22歳の渡辺さん(仮名)は、入院していた病院でパンフレットを見て、「ワンちゃんと暮らせる!」と、即入居を決めたという。

千葉県内のグループホームに暮らす、推定年齢6歳のみりんちゃん(筆者撮影)

「仕事から帰ってくると、『おかえり』と迎えてくれるようで、とても癒されます。みーちゃん(みりん)のほうも、僕がいるとうれしいみたいで、休みの日なんかはそばで安心して寝ています」(渡辺さん)

渡辺さんは運送会社で8時半から4時半まで事務管理の仕事についている。居住者が過ごすダイニングのそばが自室なのだが、間の障子を開け放って過ごすほど、開けっぴろげでフレンドリー。以前はよくてんかんの発作を起こしていたが、今のグループホームに暮らすようになってから、回数が少なくなったそうだ。

条件付きではあるが、その目的は果たされている

今回、男性、女性それぞれ1拠点ずつを見学しただけだが、それぞれストレスなく暮らせているように見えた。グループホームの目的は、困難を抱えた人が自立できるようになること。このグループホームに暮らしている限り、という条件付きではあるが、その目的は果たされているように思える。そして社会に溶け込み、人と支え合って暮らせるのなら、条件付きの自立でも構わないのではないだろうか。

なお、わおんグループホームの経営は、フランチャイズのような形で参画企業に任されるという。といっても、フランチャイズより自由度が高く、運営サポートが得られる独自の「レベニューシェア方式」を採用しているそうだ。

最低自己資金200万円程度から事業を始められる「ビーグルコース」から、800万円の「グレートデンコース」まで、4種類のプランが設けられている。

今、国内の障害者数は990万人、人口の8.2パーセントに上るという。そして藤田氏によると、今後増えていく可能性が高いそうだ。

今、世界的な課題となっているSDGsでは、地球上の動植物や、いろいろな個性を持つ人、すべてが共に生きられる持続可能な社会が目標となっている。福祉や支援についての考え方も変わりつつある。

圓岡 志麻 フリーライター

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT