「ペットと住めるグループホーム」の真価とは 精神障害者の置かれる状況は「待ったなし」

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設立は2016年と新しいが、展開はスピーディで、現在のところフランチャイズの店舗が全国に約90拠点存在する。飼い主だけでなくペットも高齢化し、ペットの介護問題が浮上するなど、ニーズが高まっているためだ。

ここまで説明してきたところでは、ペットの専門家が介護事業を始めたのかと思われるかもしれない。

しかし、実は代表の藤田英明氏はソーシャルワーカーとして、人の介護や福祉にも長い経験を持つ。2003年、夜間対応できるデイサービス施設を業界で初めて立ち上げた。こちらは全国で約850拠点に広がっている。

このように、ペットと人間という違いはあれど、現場で実際に困っていることをサポートし、サービスを広げてきたという点で共通点がある。

「日本に住む人の元気のなさ」の探求が今の道に

「子ども時代に親の仕事の関係でブラジルに住んでいました。貧しいし、社会も不安定だけれど人間は元気にあふれています。いっぽう日本に戻ってくると、豊かなのに自殺者の数は世界トップクラスで、人間に元気がない。『なぜだろう』と興味を持ちました」(藤田氏)

ケアペッツ代表取締役の藤田英明氏。29歳(人間で言えば165歳)まで生きた飼い猫のクロちゃんを介護したことが、ペットシッターサービスを開始するきっかけとなったという(筆者撮影)

その興味を追求しようと、明治学院大学の社会福祉学科に進むことになる。幼い頃から動物も大好きで、現在も実家に犬、猫、フェレット、鳥など多数飼っている。藤田氏が飼う犬や猫はなぜかいずれも長命で、一番の長老猫が26歳。かつて29歳まで生きた飼い猫がおり、その世話をしたことが、ケアペッツ設立のきっかけになったという。

そして、2018年5月に新たに立ち上げたのが、ペット共生型障がい者グループホーム。藤田氏のこれまでの実績、そして目指すところをドッキングさせたような事業だ。家賃は3万7000円で、食費、水光熱費、日用品費が含まれて利用者の負担は1カ月約7万5000円〜8万5000円。

「犬・猫の行政機関による殺処分数は数字上減っているといっても、実際にはお金をもらってペットの処分を行う『引き取り屋』という違法なサービスが暗躍しています。これは、平成25年施行の動物愛護法の改正が背景にあります」(藤田氏)

平成25年の改正とは、ブリーダーなどの動物取扱業者は、年齢が上がるなどして販売できなくなった動物も終生飼養する責務を定めたもの。実際のところそれでは利益が上がらないので、藤田氏の言う「引き取り屋」の出番になる。

次ページ改正動物愛護法が成立する一方で人間の福祉の現状は…
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