時速360km、英国「HS2」の車両受注は誰の手に? 5者が応札、日立はボンバルディアと連合
スペインのCAFはこれまでイギリス向けにロンドン・ヒースロー空港へのアクセス特急「ヒースロー・エクスプレス」の車両や路面電車、近郊用列車などを製造しており、2018年にはウェールズのニューポートに車両工場を開設。今月も、ロンドンの自動運転鉄道「ドックランド・ライトレール(DLR)」の車両を受注した。
同社はスペインやトルコに高速車両を供給しており、製品ラインナップには時速350km対応の高速車両「OARIS」がある。イギリスでの存在感を高めつつある中で、高速列車でも受注を目指す。
スペインメーカーでは、フリーゲージ車両の製造で実績のあるタルゴ(Talgo)も応札している。
同社は2018年11月、スコットランドのエジンバラとグラスゴーの中間にあるファルカーク(Falkirk)近郊に工場を新設する方針を表明したほか、イングランド北部に開発拠点を開く方針も示している。同社はスコットランド拠点の収入の柱について「HS2受注に依存するわけではない」としているが、イギリスへの参入を虎視眈々と狙っている。
果たして予定通り進むのか
イギリス政府は2020年初めにも落札者を発表する予定だ。ただ、イギリスの鉄道業界は大プロジェクトになればなるほど、半年から2年ほどのスパンで遅れを起こす傾向にあり、果たしてすっきりと発表となるかは疑問が残る。今回も、当初は2019年内にも発注先が決まるとの見込みが示されていたが、半年あまり遅れた形となっている。
その上、HS2全体予算の膨張に対する懸念も生まれている。HS2社はコストを削減するため「運行本数を削って、トンネル内での走行スピードを落とす」といった方法を提案しているほか、上院の特別委員会からは「お金がかかるロンドン中心部の駅開設を諦め、郊外にターミナルを作るべきだ」という提案さえも飛び出している。はたして本当に「高速鉄道」としてのパフォーマンスを出し切れるものが生まれるかどうかは依然未知数だ。
高速鉄道の展開については欧州大陸の主要国と比べて遅れを取ってきたイギリス。鉄道発祥国としての威厳をここで取り返すのか、それともコスト削減との折衷案で期待はずれに終わるのか。イギリスのEU脱退による景気の悪化も危惧される中、車両の落札者だけでなく今後のHS2プロジェクト全体の行方も注視したいところだ。
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