トヨタ「新型スープラ」に込めた愛車という概念 17年ぶりにスープラが復活した背景とは?
そうした高級車をいつかは「愛車」にしたい。そんな思いを、高度成長期の日本人の多くが抱いていた。
「いつかはクラウン」。かつてはカローラをエントリーモデルとして、コロナやカリーナ、マークⅡ、そしてクラウンへと、「愛車」を徐々にステップアップすることが庶民の憧れだった。日産もトヨタに対抗して、サニー、ブルーバード、スカイライン/ローレル、セドリック/グロリアというモデルラインナップを敷いた。
こうした中で、スポーツカーでは、セリカとフェアレディZがピュアスポーツの軸足となり、さらにラグジュアリー性を加味した上級スポーツカーが登場した。
スープラも、その一台だった。そもそも、セリカXX(ダブルエックス)として1978年に登場。当時、筆者の実家ではマークⅡの2ドア車に乗っていたが、買い替えの候補として発売直後に近隣トヨタディーラーでセリカXXを試乗した。
結局、実家ではマークⅡからクラウンへと買い替え、「いつかはクラウン」を達成する。つまり、初代スープラことセリカXXは、いつかはクラウンへの階段の途中にいたイメージだ。それが、第2世代スープラでは商品性を大きく転換。若者にとって“いつかはスープラ”というスポーツカーステップアップのイメージが定着した。
トヨタ86からのステップアップ
では、今回の新型スープラの位置付けはどうか。近年、トヨタに限らず2ドア車の需要が激減し、日本ではセダンからミニバンやSUVへのシフトが顕著になっている。グローバル市場でも、2ドア車の人気が比較的高かった欧州市場でもSUVシフトが進んでいる状況だ。
そのため、エントリーモデルからステップアップする”いつかはスープラ”を描くことは難しい。1つの手として、トヨタ86からのステップアップという考え方がある。実際、86と新型スープラそれぞれの開発責任者である多田哲哉氏も“卒86組”のためにスープラという選択肢が欲しかったと指摘している。それが2リッター直4ターボ「SZ」だ。
ただし、「SZ」は3リッター直6ターボの「RZ」と比べると、クルマのテイストがまったく違う。トヨタが主催した報道陣向け公道試乗会で、スープラの各モデルを試乗したうえでの感想である。この事実を、新型スープラ購入予定者は十分に理解するべきだ。トヨタ広報部によると、日本国内では5月17日の発売開始以降、約7割が「RZ」という。
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