トヨタ「新型スープラ」に込めた愛車という概念 17年ぶりにスープラが復活した背景とは?
17年ぶりに、トヨタ「スープラ」が復活した――。
この17年間、自動車雑誌などでは何度も次期スープラの飛ばし記事が出たが、多くはガセネタだった。また、トヨタ社内に初期的な企画はあったものの量産計画に結び付かなかった。
そのため、2014年にBMW2シリーズの車体を使い、トヨタが「フルランナー」と呼ぶ本物のスープラ初期試作車がドイツで走行するスパイフォトが出回っても、スープラ復活を信じるクルマ好きは少なかった。
2014年といえば、ウーバーやリフトなどライドシェアリングがアメリカを基点で勢力を拡大し始めた頃だ。その後、世界的に“クルマの所有から共有”という考え方が生まれる。ライドシェアリングの台頭によって、クルマではなくゲームやファッションなどへの出費を優先するライフスタイルの変化が顕著になっていった。
「愛車」という概念のアピール
日本では、自ら運転するカーシェアリングはあるが、欧米や中国のような個人所有車をタクシーのように使うライドシェアリングは、一部の特例を除いて実現していない。それでも、若者を中心にクルマに対する価値観は大きく変化。もはや「若者のクルマ離れ」という域を超え、クルマを移動の手段の1つとして割り切る「クルマのコモディティ化」が進んでいる印象がある。
そこに、自動運転、パワートレインの電動化、コネクテッドカーといった技術的な要因が複合的に絡み合い、ダイムラーが唱える用語「CASE」が経済メディアを中心に報道される機会が増えた。一般的に「100年に1度の自動車産業の大変革」と呼ばれる時代の変化だ。
そんな時代だからこそ、トヨタとしてはクルマの価値について、人の感性に訴える戦略を強化している。それが「愛車」という概念のアピールであり、新型スープラは、「トヨタ愛車戦略」の代表選手だといえる。
だが、新型スープラはエントリーモデル「SZ」の2リッター直4ターボの価格は490万円。同エンジンのターボの過給圧を上げた設定の「SZ-R」が590万円。これら2リッターモデルは欧米では設定がない。そして、最上位の3リッター直6ターボ「RZ」は690万円であり、庶民にとっての“愛車”と表現するには少々値が張る。
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