同日選は消滅?解散風は本当に吹きやんだのか 「老後2000万円不足」、浮上する政権への逆風

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さらに政府の失点となったのは、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」配備をめぐる防衛省の失態だ。同省はイージス・アショアを秋田市の新屋演習場に配備する方針を固めているが、同演習場に絞り込む「根拠」としたデータに大きな誤りがあったことが発覚した。

地元自治体や住民は「『新屋ありき』で進められた証拠」と猛反発、現地での住民説明会で、派遣された防衛省職員が居眠りして住民の怒りを増幅させたこともあって、岩屋毅防衛相は10日、「緊張感を欠いた不適切な行為」と陳謝した。政府は予定どおりの新屋配備を進める方針だが、「このままでは参院秋田選挙区での自民敗北にもつながりかねない」との声も広がっている。

党首討論に野党・枝野氏は及び腰

これからの会期末政局の焦点は、19日に予定される党首討論と26日の会期末直前に野党が提出を狙う内閣不信任決議案の行方だ。野党が年金だけでなく消費増税や憲法改正で攻撃すれば、安倍首相が「売られた喧嘩は買う。国民に聞いてみよう」と解散を宣言する可能性も否定できない。会期末の内閣不信任決議案については、菅官房長官が「解散の大義になりうる」との見解を示している。

表向きは「解散を受けて立つ」(枝野氏)と強気を装う野党だが、10日の参院決算委の質疑でも野党の質問者が「衆院解散」に言及する場面はなかった。与党が提案している19日の党首討論について、枝野氏は「衆参予算委での集中審議開催を優先すべきだ」と首相との直接対決に及び腰で、不信任決議案提出も「まだ白紙」と口ごもる。

おびえる野党を尻目に、首相は12日にイラン訪問に出発し、14日に帰国した後の週末から来週前半にかけて解散の是非を最終決断するとみられている。「一寸先は闇」が政界の常識でもあり、やんだかにみえる解散風が、「会期末に突風として巻き起こる可能性」(首相経験者)もなお残る。永田町のざわめきは会期ぎりぎりまで続くことは間違いない。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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