同日選は消滅?解散風は本当に吹きやんだのか 「老後2000万円不足」、浮上する政権への逆風
各メディアが同日選見送りと報じた10日、自民党の二階俊博幹事長や菅義偉官房長官は記者会見で「(会期末解散は)首相の専権事項」(二階氏)、「首相がすると言えばする、しないと言えばしない」(菅氏)と従来の見解を繰り返した。与党内には「首相はあえて解散というリスクはとりそうもない」(公明党幹部)と安堵の声も広がった。
衆院は現在、与党が全議席の3分の2超を占める。もちろん、維新など改憲に積極的な党も加えると、改憲勢力は「3分の2」を大きく上回っている。ただ、「現在の自民議席数は上限で、次の選挙での議席減は避けられない」(自民選対)。「強引に解散すれば、有権者の批判も受けて20議席以上の大幅減は避けられず、与党3分の2どころか、改憲勢力3分の2も危うくなる」(自民長老)との見方が支配的だ。
とくに自民党は、衆院でいわゆる「魔の3回生」を多数抱えており、「次の選挙では、選挙基盤が脆弱な3回生の多くが落選必至」(自民選対)とみられている。ここにきて自民若手から同日選待望論が相次いでいたのも「同日選の相乗効果で落選を避けたい」(衆院3回生)との思惑からだ。
消えぬ衆参同日選への警戒感
ただ、与党内には同日選になって投票率が上がることへの不安もある。かつて選挙直前に投票率アップを恐れて「(有権者は)寝ていてくれればいい」と発言して有権者の反発を買った自民党の首相もいた。
今回は「投票率が上がれば、あきらめムードの政権批判層に対して『寝た子を起こす』可能性があることに加え、強固な組織票に支えられる公明党の議席減にもつながる」(自民幹部)との指摘があるからだ。このため、「公明党への配慮も含め、損得を総合的に計算すれば、同日選断行のメリットはない」(同)というのが政権幹部の見立てだ。
その一方で、安倍政権打倒を目指す立憲民主党などの主要野党は、同日選への警戒感を隠さない。解散見送り報道を受けて、立憲民主党の枝野幸男代表は10日、「1986年の衆参同日選挙は『死んだふり解散』でした」とツイートした。当時の中曽根康弘首相が「解散断念」の素振りをして通常国会を閉幕させ、その直後に臨時国会を召集して衆院の冒頭解散で同日選に持ち込み、衆参で記録的大勝を収めた歴史を念頭に置いたものだ。
しかし、その前の1980年の大平正芳首相(当時、故人)による「ハプニング解散」での同日選もともに中選挙区制下で実施されており、今回同日選となれば小選挙区比例代表制では初のケースとなる。その場合、有権者は投票所で衆院選挙区→衆院比例→参院選挙区→参院比例という4つを別々に投票することになる。
公明党が同日選に反対するのは「支持者が混乱する」(幹部)のが理由だが、選挙専門家は「有権者が4票を与えられて選択肢が増えれば、投票先を分散させる可能性が高い」と指摘する。
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