トヨタ「電気自動車」でついに本気を出した理由 EV向けリチウム電池調達で中国企業とタッグ

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それではなぜ今トヨタはCATLやBYDと組むのか。中国の自動車産業に詳しいみずほ銀行法人推進部の湯進(タン・ジン)主任研究員は、「CATLやBYDのリチウム電池は品質面でパナソニックと遜色がなく、価格競争力もある。中国の2社と組むことで供給面の課題もクリアできる」と今回の提携を評価する。トヨタで中国事業を統括する上田達郎執行役員は「中国のローカルサプライヤーも力をつけてきている。品質に遜色がなければ、後は競争力ということになる」と話す。

CATLは欧州での生産能力を増強

リチウム電池世界首位のCATLは今後の欧州でのEV販売拡大を見込み、現在ドイツにリチウム電池工場を建設中。2021年に生産開始予定で2022年には同工場で14ギガワット時の生産体制を目指す。

2017年のCATL全体の世界出荷実績(21.2GWh)の3分の2に匹敵する大規模な投資だ。大量受注したドイツのBMWのほかVWやダイムラー、イギリスのジャガー・ランドローバー(JLR)などに幅広くリチウム電池を供給する計画だ。

トヨタは現時点ではCATL製電池は中国で販売するEV向けに調達を受けるとするが、今後は欧州で販売されるEVに搭載される可能性もありそうだ。トヨタパワートレーンカンパニー電池事業領域の海田啓司領域長は、「CATL製電池をまず中国向けに導入することを考えているのは、EVが一番求められている地域だからだ。各社の電池をどのエリアに使うかは、今後の車両の性能や各地域の状況に応じて柔軟に最適な配分をお願いする」とする。

CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)と呼ばれる新技術領域が加速し、最近は自動車業界の内外を問わず「仲間づくり」に忙しいトヨタ。豊田章男社長は今年5月の決算説明会で、仲間づくりのキーワードとして「オープン&スピード」を掲げ、「トヨタが選ぶわけではなく、選ばれる立場になることが重要。自分たちの強みと弱みを理解したうえでパートナーから認めてもらう競争力と信頼度を身につけないといけない」と強調した。

「エコカーは普及してこそ初めて役に立つ」というのがトヨタの信条。ただ、最終的にEVが売れるかどうかはやはり消費者次第だ。トヨタのEVだからこそ、顧客に提供できる価値とは何か。EVの市場投入本格化を控える今こそ、本質的な問いにじっくり向き合うときかもしれない。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年10月から東洋経済編集部でニュースや特集の編集を担当。

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