リクシル、対立の根底に海外買収攻勢の「失敗」 問われているのは「ガバナンス」だけではない

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だが、ペルマは事業の約4割をアメリカが占めている。買収を審査した対米外国投資委員会(CFIUS)は昨年10月、LIXILに対して国防上の理由から中国企業への売却を認めないとの判断を通知。これにより同社は、ペルマの会計処理上の分類を「継続事業」に戻さざるをえなくなり、2019年3月期の最終利益が235億円減少する見込みだと明らかにした。

潮田洋一郎氏、山梨広一氏はともに6月の定時株主総会で取締役を退任する(編集部撮影)

以前から、潮田氏は世界各地のランドマーク的な建築物にビルサッシを供給するペルマのことを「宝物のような会社」と明言していた。

潮田氏から見れば、瀬戸氏はその宝物を売却しようとし、失敗して会社に巨額の損失を負わせた格好だ。潮田氏が瀬戸氏を事実上解任したのは、CFIUSの通知の直後だったこともあり、「潮田さんはそれが許せなかった」と、当時から関係者の間でささやかれていた。

結局のところ、経営混乱の発端となった潮田氏と瀬戸氏の対立も、その根っ子は身の丈を超えた海外M&AとLIXIL本社のマネジメント能力不足にあったと言えそうだ。

予想利益と実績に1000億円超の落差

その後、ペルマの実態はさらに劣化していることが露呈した。4月18日、LIXILはペルマの全受注を再精査したところ、原材料・人件費の高騰や熟練マネジャーの大量退職による工期遅れなどにより330億円の追加の事業損失が生じると発表した。

さらに減損テストの結果、のれんを含む無形固定資産245億円の一括減損を迫られたこともあり、LIXILグループの2019年3月期決算は522億円の最終赤字に転落。期初に発表した見通しの最終利益500億円とは1000億円を超える下方修正で、ペルマだけで775億円を占めている。

ペルマの追加損失の公表と同時に、潮田氏は取締役の辞任を表明。その記者会見で潮田氏は「巨額損失の第一義的な責任は前CEOの瀬戸氏にある」と批判したうえで、ペルマの実態について「(瀬戸氏から)取締役会に詳しい報告がなかった」「瀬戸氏に辞めてもらって初めてわかった」などと釈明した。

これに対して瀬戸氏は、「取締役会には定期的に報告していた」「私が辞めてわかったというのはウソだ」と反論している。

その一方、ペルマの巨額の追加損失が唐突に明らかにされたことについて、瀬戸氏は「建設業で一般的な工事進行基準で会計処理しており、工事コストが受注時の見積もりから大きく変わってしまった場合、後になってまとまった損失を計上することがある。必ずしも不自然ではない」と説明した。

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