「仕事が遅い上司」を今すぐ動かす2つの心理術 理屈で動かない相手には「恐怖心」を刺激しろ
では、具体的にはどんな「悪いこと」で恐怖心をあおるのがよいのか?
結論から言えば、仕事の場面では「やらないと、責任問題になる」という悪いことが有効でしょう。例えば、次のように。
(他部署に)「できれば急いでもらえると。作業がどこで止まっているのか、上も見てると思うんで」
(発注先に)「前にこの期限を守らなかったときに、そうとう問題になったみたいなんで」
(上司に)「社長もこの仕事の進捗はかなり気にしているらしいんで、決断は急いだほうがいいと思います」
ちなみに、この「責任問題」で恐怖をあおる方法は、個人よりチームが大事ないわゆる優等生タイプの人間にも有効です。それは単に「チームに悪いことが起こるかもしれない」と言うのと、「“君のせいで”チームに悪いことが起こるかもしれない」と言うのと、どちらを彼らが恐れるのかを考えれば明白です。
あいまいな言い回しが恐怖を煽る
また、あいまいな言い回しでネガティブな内容をぶつけるのも、恐怖をあおるのには有効です。
「この作業が遅れたせいで、前にとんでもないことになったんで」
「本当にヤバい」「とんでもないことになった」。このあいまいさが相手の恐怖心への呼び水になります。こうすることで「何があるんだ?」「自分にも何か起きるんじゃないか?」と想像させるのです。恐怖は相手の中で勝手に大きくなります。
人間には、あいまいさを目の当たりにすると、想像で補って大きくしてしまう心理的な性質があります。
例えば、占いや予言。占い師や予言者を信じている人間は、「○○に当てはまる人間には、悪いことが起きるぞ」(実際にはもっと神秘的な言い方をするものですが)とあいまいに言われただけで、「悪いこと」の内容を勝手に補い、「アレが起こるんじゃないか」「コレがそうだったんじゃないか」などと悪い想像の渦に巻き込まれてしまいます。これは、内容があいまいだからこそ、自分が恐れるものを勝手に想像してしまうのです。
もちろん、あいまいな言い回しでこうした効果を生み出すには、語り口も大事です。
第3回で「相手を感情的にするためには、自分が率先的に感情的にならなければいけない」という話をしましたが、それは恐怖をあおる場面でも同じ。
恐怖をあおるのに、明るい声や軽い調子で話してしまっては効果はありません。率先して恐ろしそうに、深刻そうに語りましょう。“いずれ”悪いことが起こるのではなく、言ったことをやらなければ、“すぐに確実に”悪いことが起こるという感じがでるようにしなければいけません。