「仕事が遅い上司」を今すぐ動かす2つの心理術 理屈で動かない相手には「恐怖心」を刺激しろ

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それには理屈で理解させようとしてもダメ。この手の人は、理屈で解消されたりはしません。もっと直接的に心を揺さぶらなければならないのです。

そのためにはどうすればいいのか?

ここでちょっと復習。第8回で、キケローが示した人を言葉で動かすための2つの道筋をご紹介しました。それが次の2つ。

1、義務感に訴える
2、感情をあおる

第8回では、格上の相手を動かすために1の義務感を利用する方法を見ましたが、今回の場合、なんといっても2の感情(パトス)でしょう。義務感を利用しようにも相手の義務感が弱いから、そういう状態になっているのですから。では、どのような感情をあおればいいのか? 

それは「恐怖」です。

「恐怖」は歴史的に見ても、人を動かすのに利用されてきた由緒ある(?)感情です。政治指導者は刑罰の恐怖、敵国の恐怖などによって大衆を動かしてきましたし、恐怖を利用した犯罪である恐喝は、はるか昔から今に至るまでなくなりません。

そこまでたいそうな話でなくても、家庭で一度は耳にする「お父さんに言いつけるよ」「お母さんに言いつけるよ」「次やったら、おやつはなしだよ」などというのも、ソフトな形にせよ、本質的には恐怖を利用して人を動かそうとしているのです。

それだけ恐怖は、幅広い人を動かすのに使い勝手のいい感情だと言えます。

恐怖を「個人」に向けよう

では、そもそも「恐怖」とはなにか? 

弁論術の開祖アリストテレスは恐怖について、「悪いものの予期」(『ニコマコス倫理学』第3巻第6章)と定義しています。「悪いことが起こるんじゃないか」という予感こそが恐怖なのです。

したがって、恐怖で相手を動かすには、「言われたことをやらないと、悪いことが起こるんじゃないか」と思わせなければなりません。

しかも、その「悪いこと」は、所属する部署やチームなどに対してではなく、聞き手個人に関わるものであることが大事。

ほとんどの人間にとって、「やらないと、会社に悪いことがあるよ」より、「やらないと、君自身に悪いことがあるよ」のほうが正直恐ろしいものです。それに、まあ、こういう言い方もなんですが、とくに「やる」と言ってやらないような責任感が薄いタイプの人間には、個人あての悪いことのほうがてきめんに効きます。

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