吉田カバンと土屋鞄はこんなにも進化している 軽量化や防水が進み、「リュック」も充実

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ランドセルで有名な土屋鞄製造所も、2018年、水に強い「Plota(プロータ)」というシリーズの男性向け革カバンに新色を投入した。同社は革カバン専門メーカーだ。一般に、革素材は水に弱く、濡れるとシミになったり、水ぶくれとなったりするデメリットがある。

「この製品で取り入れたのが『防水ファインレザー』という素材です。革の表面にコーティングするのではなく、強力な防水材を繊維にまで浸透させました。防水や防油性を持たせつつ、 天然皮革が持つ質感を保つようにしています」(広報担当・前田由夏氏)

ビジネス現場では重要な役職を務める女性も増え、「プレゼンテーションの場でも持参できるカバンが欲しい」という要望も、同社に寄せられたという。

「そこで、女性向けには『HINON(ヒノン)』という別シリーズを開発。こちらも“雨にも負けない仕事鞄”としてご案内しています」(同)と話す。

「ストレスの少なさ」も重視

小物が増えると、収納や出し入れがスムーズにいかないときもあるだろう。とくに男性は、カバンのポケット別に財布や携帯などを分けて収納する人が多い。

「例えば一般的な金属製ファスナーは、向きによって開けにくくストレスがかかる時もあります。また、定期入れや名刺入れを収納するポケットの口元のステッチ(縫い目)に引っかかることもある。混雑する駅で、改札が近づいて定期入れを出そうとして引っかかると、気持ちが焦ると思います」(吉田カバン・阿部氏)

「それを避けるために当社のカバンには、ファスナーのエレメント(務歯)を一つひとつ研磨して滑りをよくし、開け閉めの際にストレスの少ない高級ファスナーのエクセラを使用したり、ポケットの口元にステッチを出さないタイプもあります」(同)

混雑する電車の車内でリュック愛用者のマナーを批判する声は目立つが、「以前よりは洗練してきた」という声も聞く。例えば背負わずに前掛けで乗る人はかなり増えた。そうなると、前掛けでもカッコいいカバンを開発する企画もあるだろう。

国内のカバン市場は「1兆1000億円弱」で推移している。矢野経済研究所が発表した「国内鞄・袋物小売市場」の調査では1兆0942億円(2017年度見込み)だった。この10年の同調査では一時9000億円を割り込んだが、再び回復基調にある。

低価格のカバンを選ぶ人、数万円以上のカバンを選ぶ人などさまざまだが、高額のカバンや日本製の品質のよいカバンは、インバウンド(訪日外国人客)にも人気だという。

ちなみにカバンの売れ筋の色は、男性では「ブラック」が圧倒的だ。「男性向けで売れる商品の8割以上が黒色」というメーカーもある。吉田カバンのように、遠目には黒に見えても、近くで見ると微妙な色合いになっていたり、迷彩柄を用いたデザインで訴求したりするケースもある。細部にこだわり、他人と差別化したい人に人気だ。

こうして考えるとカバンは、入れる荷物、使い勝手、軽さ、丈夫さ、デザイン性などの視点、そして「納得価格」かどうかで選ばれるようだ。カバンに対する思い入れは人それぞれ。今日の自分の行動に合わせて使い分ける人もいれば、気にしない人もいる。

最近はスーツケースを引く人も増え、当たっても痛くない素材を開発するメーカーもある。使う人の意識の問題も大きいが、メーカーなりに対策を立てているのが現状のようだ。

高井 尚之 経済ジャーナリスト、経営コンサルタント

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たかい なおゆき / Naoyuki Takai

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。

 

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