マツダ、新型「MAZDA3」が背負う重大使命 VW「ゴルフ」、ベンツ「Aクラス」とガチンコ勝負

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アクセラは「ファミリア」の後継車種として2003年に初代が登場。2009年発売の2代目、2013年発売の3代目とフルモデルチェンジごとに乗り継いでいるコアなファンも多い。国内保有台数(新車登録時のみ、中古車は除く)は約15万台もあり、マツダ3への一定の乗り換え需要は見込めそうだ。

ただ、Cセグメントの市場規模は国内では2012年に40万台あったが、2016年度には30万台と4分の3に縮小している。従来のアクセラと同じような売り方では販売台数を伸ばせないことは想像に難くない。

そこでマツダはセダンを買う消費者がセグメント(車両の大きさ)をまたいで車種を選んでいることに着目。価格帯をCDやDといった上位のセグメントにも広げることで、市場規模を自ら広げることにした。ハッチバックはこれまで低・中価格帯をカバーしてきたが、これを高価格帯にまで拡大することで市場規模を4割増やす。セダンは従来の低・中価格帯から中・高価格帯に価格帯をスライドすることで市場規模を5割増やす。

欧州系と同じ土俵で戦う

Cセグメントの中高価格帯には欧州メーカーの有力車種がひしめき合う。独フォルクスワーゲンの「ゴルフ」やBMWの「1シリーズ」、メルセデス・ベンツの「Aクラス」、アウディの「A3」など。最近では輸入車各社が価格帯を下に広げていることもあり、競合は激化している。国内営業担当の福原和幸常務執行役員は「新型マツダ3には輸入車ユーザーからの問い合わせも多い。これだけのデザインと装備でこの価格は安いと話す方も多い」と明かす。

マツダは2012年のCX-5を皮切りに投入した商品がヒットを連発し、輸入車ユーザーからの買い替えや買い増しを獲得できるようになってきた。革新的なSKYACTIVエンジンや魂動デザインの導入でブランド力が引き上がったことが大きい。マツダは今のブランド力があれば、マツダ3を輸入車と競合する価格帯に投入したとしても勝算があると見る。

新型マツダ3について発表する丸本明社長(写真:尾形文繁)

メインターゲットは、ハッチバックが個性的な車を求める40代半ばの男性、セダンは走行性能に車の価値を置く50代男性だという。いずれも車に一定のお金を払える余裕のある層で、既存の輸入車ユーザーとも重なる。

価格帯が上がれば、商品性やブランド力がより重視されるのは言うまでもない。量販価格帯に比べて、他社とのインセンティブ(販売奨励金)競争に巻き込まれるリスクは減るが、ニューカマーが割って入るのはそう容易ではない。マツダの足元の世界シェアは約2%。台数成長には慎重な姿勢を取り、商品力、ブランド力の向上による収益性の改善に力点を置く。

丸本社長は「次の100年に向けて、規模が大きくはないマツダが存続し続けるために最も重要なことはマツダの独自性だ」と語る。現時点で持ちうる最新の独自技術やデザインを詰め込んだ新型マツダ3。その成否がマツダの今後の成長性を占うことになりそうだ。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年から東洋経済編集部でニュースの取材や特集の編集を担当。2024年7月から週刊東洋経済副編集長。

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