マツダ、新型「MAZDA3」が背負う重大使命 VW「ゴルフ」、ベンツ「Aクラス」とガチンコ勝負

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実は、マツダは今回、SKYACTIV-Xの燃費を「未定」として発表した。搭載モデルは今年10月発売を計画する(7月予約受注開始)が、自動車メーカーが新車の商品性を大きく左右する燃費を新車発表時に未定とするのは極めて異例。丸本社長は「開発陣も最後の最後まで調整している。国土交通省に届け出次第、すみやかに発表する」と述べるにとどまった。

今回のマツダ3に合わせて投入された新世代エンジン「SKY ACTIV X」(編集部撮影)

Xは「SPCCI(火花点火制御圧縮着火)」というマツダ独自の技術で、他社も研究開発していたが量産化にメドをつけたのはマツダのみだ。平たく言うと、この技術では、ガソリンをディーゼルエンジンのように自己着火させることで、従来よりも少ないガソリン量で同じだけの出力を得られるため、パワーと環境性能の両立が可能になる。

マツダは開発の過程で自己着火が可能な温度範囲がわずか3度しかないことに行き当たる。そこで、火花を飛ばし点火するスパークプラグの制御に独自の調整をし、エンジン内部を高圧に保つことで、自己着火が可能な温度範囲を50度と飛躍的に広げることに成功したのだった。世界初の技術の量産化だけに他メーカーも高い関心を寄せるが、発売まで半年を切っても調整を続けるほど技術的難易度が高いということだろう。

車体の設計も抜本的に見直した。歩いているときに頭部の揺れを自然に抑える人間の高度な能力に着目。この能力が発揮できればドライバーの負荷が軽減できると考え、シートの構造だけでなく、ボディやシャシーの構造や剛性にまで踏み込んで改善を加えた。

SUV人気の中、セダンは売れるのか

マツダ3は今年1月に北米を皮切りに発売し、欧州やオーストラリアにも投入済み。今後は中国や東南アジアなどほかの市場にも順次投入する。年間販売目標は世界で35万台、日本では2万4000台。世界的にはSUV(スポーツ用多目的車)が人気で、近年はマツダでも「CX-5」を筆頭に「CX-3」や「CX-9」といったSUVが販売を牽引する。マツダの世界販売に占めるCX系の比率は2019年3月期には49%とこの5年で20ポイント以上増えている。果たしてセダン系のマツダ3に勝算はあるのか。

2018年のアクセラの国内販売台数は約1万8000台。デミオ(4万8000台)、CX-5(3万8000台)、CX-8(3万台)に次ぐ。しかし、世界販売に目線を移すと景色は大きく変わる。首位はCX-5の約47万台だが、マツダ3が約38万8000台で2位に入り、24%を占めた。マツダは2020年3月期に世界販売台数を161.8万台と見込み、年間販売35万台を計画するマツダ3が2割以上を占める計算だ。

「世界ではSUV化が進んでいるが、多くの国で初めて車を買う人が選ぶ車がCセグメントカー」と丸本社長は話し、Cセグメントに属するマツダ3を販売戦略上の基幹車種と位置付ける。最初に買う車にマツダ3を選んでもらい、マツダファンになってもらえれば、次の乗り換えでもマツダ車を買ってもらえる可能性が高まるからだ。日本でもマツダ3がエントリー層を取り込む役割を担い続ける。

実際、「(価格帯が低い)1.5リットルのガソリンタイプを設定したのは若年層をカバーするため」とマツダ3のマーケティングを担当する国内営業本部の齊藤圭介主幹は話す。

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