デトロイトの街にジャパンバッシングが再燃?

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 2008年12月、米国デトロイトの日本総領事館が1枚の警告文を発表した。

「日本車およびアジア系へのバックラッシュ(反発)」と題したその文書では、デトロイト市南に位置するショッピングモールにおいて、日本車がパンクさせられ、その上に「Buy USA」と落書きされていたという現地報道を紹介している。その上で日本総領事館は注意を呼びかけ「目立つ行動はしない」「運転中はドアロックをする」「人目の多い場所を選んで駐車する」との具体的予防策を提示した。

デトロイトの米自動車メーカー・ビッグスリーが政府から短期融資を得たとは言え、依然として存亡の危機にあるのは間違いない。こうした状況の中、上のように排他主義に走る向きもあるようだ。これは一瞬、日本人にとってかつて巻き起こった猛烈な日本車バッシングを彷彿とさせる。では実際、デトロイトの街に日本人バッシングが高まる可能性はどれだけあるのだろうか。現地デトロイトに在住の日本人に聞いた。

「日本人はこの種の小さな報道に過剰に反応しすぎだ。実際のところ、あのパンク事件はフォルクスワーゲンの車なども対象となった。デトロイト市民はそれほど気にかけてなく、私の身の回りでも(日本人バッシングは)まったく起きてない」と、危険性を否定するのは、在住15年の中浜昭太郎・デトロイト日本商工会事務局長だ。現在、デトロイトには約1万人の日本人が住んでいる。中浜氏によれば、その多くは短期の駐在員だが、1982年にデトロイトで起きた日本人と間違われて中国人労働者が撲殺された事件が、今もトラウマ的に語り継がれ過剰な警戒心を呼んでいると指摘する。

「しかし、当時と違って日本車メーカーの現地生産が進んでいる。また多くのアメリカ人は、今回の危機の本質はビッグスリーの経営自体にあると冷静に理解しており、バッシングの危険性が今後増すとは考えにくい」(中浜氏)。

もはや日本人が直接狙い撃ちにされることはないにせよ、不景気のあおりでデトロイト市全体の治安が悪化していないのだろうか。これも中浜氏は懐疑的だ。「ほとんどの日本人は治安の比較的良いデトロイト郊外に住んでいる。またデトロイト中心部も(もともと治安が悪いものの昨今の状況でさらに)急悪化した印象はない」。

FBIが今年1月に発表した2008年1-6月期の犯罪統計を見ても、デトロイトの凶悪犯罪件数は8443件で前年同期比より10%減少している。データからみても、確かに在留日本人の生活が脅かされている状況にはなさそう。デトロイトには空きビルが目立つものの、日本人1人がまったく街を歩けないほどの様子はない。

ただ、別のデトロイト在住のある日本人からはこういった懸念も聞かれた。「ビッグスリーのリストラはまだ途中にある。今後の政府融資で手元資金に余裕が出て来たら、工場閉鎖などの人員削減などをさらに本格化させるだろう。そこで失職したブルーカラーがアジア人やアジア車に対し感情的な行動を起こしてしまう危険性はある」。

(西澤佑介 =東洋経済オンライン)

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