タピオカドリンク「ゴンチャ」が大人気のワケ 葛目良輔社長が目指すのは「お茶のスタバ」

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同チェーンでは、新規出店時の集客パターンが変わっており、出店後3カ月後ぐらいから客が急増することが多いという。確かに、出店後すぐは来店客数が一気に高まるが、3カ月ほどかけて落ち着いていくのが普通だ。

この理由としては2つ考えられる。ゴンチャでは飲み方や量、トッピングなどのアイテム数が多く、初心者ではオーダーに時間がかかる。多くの人に浸透するまでにはある程度の期間が必要だ。

また、同じことが店舗スタッフにも言える。スタッフがオーダーへの対応に習熟してきたところで回転が上がり、多くの客を呼び込むことができるようになる。これが、出店3カ月後に客が増える理由だ。

スタッフはサービスの要だ。ゴンチャファンならではの熱意に支えられた、フレンドリーな対応が特徴(写真:ゴンチャ ジャパン)

このことも合わせて考えると、 “臨界点超え”の大きなきっかけになっているのが、2017年9月、10月の渋谷、新宿への出店だと、葛目氏は分析する。当然と言えば当然のような気もする。このように、ゴンチャの今の人気も流行の1つであれば、流行には必ず終わりがくる。それをどのように考えるのだろうか。

「もちろんビジネスなので山もあれば谷もあります。しかしコアバリュー、チェーンにとっての原点を失わないようにすれば、乗り切れると考えています」(葛目氏)

コアバリューとはつまり、4つのPで説明したような商品やブランド戦略。安定した価値を客に届けていくことで、一時のブームに終わらず勝ち残れるという。

また、そうした一定の価値を支えているのが、実はスタッフだ。

「ゴンチャ好き」スタッフが接客クオリティに不可欠

「安定した価値の提供。これはつねにヒューマン・スキルです」(葛目氏)

まず、カスタマイズで2000種を超えるアイテム数に対応する必要がある。メインとなるお茶も、今は多くの店舗で1~2時間で使い切ってしまうものの、もともとは4時間以上置かない、というポリシーを立てている。

また、550円という単価に見合うサービス品質、店舗での体験という価値をお客に提供する必要がある。これらをなしうるには、スタッフのマインドや情熱が欠かせないという。

ゴンチャではスイーツも充実。定番のマンゴーケーキ、パイナップルケーキのほか、提供店舗が限られるが、タルトやプリンなども扱っている。写真は「エッグタルト」250円(筆者撮影)

しかし、一人ひとりにそれを持たせるのは簡単なことではない。同チェーンでは、今は7割がフランチャイズ店。そこに、平均的に店舗あたり常時15人が在店、在籍スタッフ数は50~70人に上る。となれば、もはや小社会だ。トップとなる店長の采配はもちろん、スタッフ同士の人間関係などもモチベーションに関係する。時給も、他のチェーンに比べ高給というわけではないそうだが、いかに維持するのだろうか。

「当社としては、お客様と同じぐらい大事な存在。スタッフに応募してくるのは、9割がゴンチャのファンですね。さらに、当社のビジョンをしっかり説明して、お客様に価値を提供するんだということをわかってもらう。だからスタッフはゴンチャが本当に好きで、前向きなマインドをもって働いていると思いますし、逆に言えばそういったスタッフが残っているのだと思います」(葛目氏)

今後は2020年に100店舗を1つの目安にし、「今までやってきたことを年齢、性別問わず提供していく」(葛目氏)ということを方針としている。といっても、変化に対応しないわけではない。例えば今流行している「チーズティー」や「バター茶」などトレンドを取り入れつつ、新しいお茶の楽しみ方を伝えていくという。

カフェチェーンのなかのお茶のブランドとして、確固たる地位を築けるか。挑戦は続いていく。

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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