資生堂が400億円かけた「横浜新研究所」の正体

カフェやスタジオ、化粧品売り場も併設する

施設内に併設されたカフェ。ドレッシングをビーカーに入れるなど、細部にわたるこだわりが見える(記者撮影)

横浜新研究所の3階以上は、オフィスゾーンになっている。バーチャルで作られた化粧品・日用品売り場が映し出される商談スペースや、他メーカーが利用できる共同実験室など、ここでもほかの研究所とは異なったつくりになっている。

通常、研究施設といえば閉ざされた空間で競合メーカーに先んじて優れた商品を世に出すための開発を行う場所、というイメージを持つが、今回開設した研究施設は「開かれた研究施設」というのを前面にアピールしている。

実際、新研究所のお披露目会で魚谷社長は「外部との連携」という言葉を何度も強調していた。背景にあるのがここ数年化粧品業界に押し寄せるテクノロジーの波だ。資生堂をはじめ数々の化粧品メーカーは、画面上でさまざまなメイクを楽しめるバーチャルメイクや、自分のその日の肌の状態に合わせて化粧水や乳液を配合してくれるマシンの実用化を進めている。これらには、AR技術やIoT(モノのインターネット)など、さまざまなテクノロジーが必要とされる。

研究開発比率を4%に引き上げ

こうした動きをいち早く取り込むためにも、これまでの化粧品メーカーとしてのノウハウだけではもはや限界が生じている。資生堂は2017年にアメリカのAI関連のベンチャー企業を買収。2019年初には中国のスタートアップ企業との協業を進めるため、「中国事業創新投資室」を本社直轄組織として立ち上げた。「横浜新研究所で単純に開発するだけではなく、テクノロジーやITも一緒に連携していきたい」(魚谷社長)。

商談スペースの壁には、バーチャルで作られた売り場が映し出される(記者撮影)

資生堂の直近の業績は、2018年12月期の売上高が1兆0948億円(前期比8.9%増)、営業益が1083億円(同34.7%増)。旺盛なインバウンド需要に支えられ好調が続くこのタイミングだからこそ、400億円超の新研究所の設立に踏み切れたのだろう。

売上高に占める研究開発費比率をみると、競合の花王(化粧品部門)は3.7%、ポーラ・オルビスホールディングスは2.0%に対し、資生堂は2.7%。同社は今後、研究開発費比率を4%にまで高める目標を掲げている。

ただ競合メーカーからは「『研究所=シークレット』という印象を覆す画期的な施設だと思うが、わざわざ消費者が足を運ぶほど魅力的かは疑問だ」との声も聞こえてくる。新研究所が目指す、消費者の声を生かした製品を生み出すためにも、国内外への周知徹底が欠かせない。

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