日本の観光業は「生産性向上」最高の教科書だ 令和ニッポンの勝算と課題は「観光」でわかる
2018年のデータを見ると、もう1つの興味深い成果が認められます。ヨーロッパ各国、そしてアメリカ・オーストラリア両国(以下、欧米豪と略します)からの訪日客の増加です。
2018年は訪日外国人の数が前年に比べ8.7%増え、3119万人になりました。その内訳は、アジアが8.3%増、ヨーロッパが12.7%増、オセアニアが11.7%増、北アメリカが10.4%増です。欧米豪からの訪問客数の伸びがアジアからの客の伸び率を上回るのは、久しぶりのことです。
欧米豪からの訪日客を激増させた取り組み
このような変化が現れたのには、2つの理由があります。1つは関西国際空港を中心に、アジアからの観光客の伸びが減少したこと。そしてもう1つが、欧米豪からの訪日客を増やすための新しい政策が実行され、その成果が出始めたからです。
2018年の2月から、日本政府観光局(JNTO)が「Enjoy my Japan」のキャンペーンを実施し、日本の魅力を新しい形で発信し始めました。今まで以上に、観光客が求める観光資源をデータ分析し、それにそって日本の多様な魅力が届けられました。とにかく日本は面白い、楽しい、多様性に富んでいる。それを外国人目線で訴えている動画です。
もう1つの変化は、これまで日本人だった動画の主役を外国人に変えたことです。もちろん日本人と交流している場面が多いですが、より身近に感じてもらうために、外国人がメインとなっています。
その登場人物も、女性、男性、アジア人、黒人、白人、家族連れ、年配者、子どもなど、データに基づいて選ばれています。和食だけではなく日本の洋食も紹介していますし、魚嫌いの人のために肉料理も、ベジタリアンのために日本の野菜料理もおさえています。また、伝統文化だけではなく、ビーチや海などの自然やアクティビティの魅力も伝えています。
JNTOは海外事務所網を充実させつつあります。さらにFacebookの発信をより戦略的に実行することで、誘致の仕方を高度化しています。これぞまさに、付加価値向上戦略です。
欧米豪からの訪日客は、滞在日数が比較的長く、そのぶん、地方で使うお金も多くなる傾向があります。これは欧米豪からお客さんによりたくさん来てもらう、大きなメリットです。
欧米豪各国から訪れるお客の場合、出身国によって訪れる地域が異なります。そのため、特定の地域への集中が緩和され、日本国内のさまざまな地域を訪れるので、さまざまな地域へ恩恵をもたらしてくれます。
また、欧米豪からの訪日客の場合、何かを「見る」だけではなく、体験型を嗜好する傾向が相対的に強いので、飲食・物販・宿泊などのいわゆる観光産業以外のさまざまな産業にもプラスの経済効果をもたらしてくれます。
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