日本の観光業は「生産性向上」最高の教科書だ 令和ニッポンの勝算と課題は「観光」でわかる

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欧米豪からの訪日客を増やすもう1つの狙いは、世界中から満遍なく来てもらうことによって、特定の国や地域への依存度を下げることにあります。地域リスクの分散です。

この狙いは、思いかけず2018年に奏功しました。2018年に起きた自然災害によって関西国際空港が閉鎖され、アジアの観光客が物理的に訪日できない事態になったのですが、主に成田と羽田に到着する欧米豪からの訪日客の増加が、アジアの減少の一部を相殺したのです。これからも、この「満遍なく」戦略をさらに発展させる必要があると思います。

8兆円の「収入目標」の達成は現状では困難

このように、一見すると順風満帆な日本の訪日観光客誘致戦略ですが、まだまだ解決しなくてはいけない課題も残っています。

日本政府は、2020年に訪日外国人数4000万人、収入8兆円を目標として掲げています。

4000万人という人数の目標は、おそらく達成できるでしょう。しかし、残念ながら、さらに重要な観光収入の目標達成は困難な見通しです。

なぜ困難なのか。これには官・民の取り組みの齟齬(そご)が最も関係しています。

人数目標に関しては国の役割が大きいです。観光ビザの条件緩和のほか、日本政府観光局などが頑張って海外市場を対象にマーケティングをしっかりやれば、達成することも決して非現実的ではありません。

さらに、国は欧米豪からの訪日客や富裕層の呼び込み、最も滞在時間が長い自然観光、農泊などにも力を入れているので、旧来の伝統的な日本の姿を見せるだけの観光より、稼げる仕組みが徐々に作られています。

一方、収入目標の達成を主導するのは、民間です。いうまでもなく、観光収入のほとんどは民間の収入です。アクティビティ、宿泊、食事、文化財の拝観料などなど、せっかくお金を持ってきた外国人観光客にお金を落としてもらう機会を提供しないと、収入は増えません。

しかし現状では、せっかく国が誘致して連れてきている海外の観光客から、民間がまだ十分なお金を落とさせていないと言わざるをえません。事実、2017年の訪日外国人観光客1人当たりの支出は、2016年に比べて、増えるどころか89ドル減少の1187ドルとなり、先進国平均の1200ドルを下回りました。

何としても「客単価」を増やすために奮起してもらいたいのが、宿泊業界です。

ホテルに関しては、観光客の増加に伴い、稼働率が高くなって、単価が上がる傾向がここ数年続いています。さらに、新しく設備投資が行われることによって、より単価の高い新しいホテルも増えています。

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