うつには「野菜と果物をとるといい」は本当か

幸福感や満足度を向上させる食品とは

食生活の変化がうつ病治療に有効かどうかを調べた初めてのランダム化比較試験の1つが、2017年に発表された。オーストラリアの精神疫学者フェリス・ジャッカが率いたこの研究で、被験者は12週間、「地中海式ダイエット」を実践。すると気分が向上し、不安のレベルが低下した。

地中海式ダイエットは、全粒穀物、豆類、魚介類、栄養価が高く食物繊維が多く含まれる葉野菜などを多く摂取する食事で、有用な腸内細菌を増やす。研究によれば、健康な腸内細菌叢は、気分を左右するセロトニンなどの神経伝達物質の処理に重要と見られている。

「彩りよく食べること」がカギ

「われわれが行った脳画像研究では、地中海式ダイエットを実践している人の脳は、典型的な欧米の食生活をしている人よりも若々しく、大きく、代謝が活発だ」と、ニューヨークにあるウェイルコーネル・メディカルセンターのウーマンズ・ブレイン・イニシアチブのリサ・モスコーニ所長は言う。こうした脳の効果は、認知症を予防する可能性があるという。

モスコーニとラムジーが口をそろえるのは、「彩りよく食べること」だ。つまり、ピーマンやパプリカ、ブルーベリー、サツマイモ、ケール、トマトなど、さまざまな色のフルーツや野菜を摂取するということだ。こうした食べ物は、脳を含む体全体の炎症を抑えるとされるファイトニュートリエント(植物性栄養素)が多く含まれ、成人期を通して新しい脳細胞の成長を促すと、彼らは指摘する。

ただ、ハーバードメディカルスクールで精神科の臨床指導を行っているエミリー・ディーンズは、植物由来のものしか食べないことはリスクを伴う恐れがあると警鐘を鳴らす。例えば、厳格なベジタリアンやビーガンは、多様な食生活の人よりもうつ病と摂食障害を発症するリスクがやや高くなる恐れがあることは、複数の大規模観察研究で示されている。肉を食べない人も栄養補助食品を摂取する必要があるかもしれない。

「長鎖オメガ3脂肪酸やビタミン12など、脳が必要とする重要な栄養の一部は、野菜のみの食事では得られない」と、ディーンズは指摘する。

精神科医のラムジーに協力しているフードコーチのエルクリーフは、精神的な健康をもたらすのは、何を食べるかだけでなく、食べ物に対する私たちの態度だと言う。

「喜びをもたらし、気分を向上させる食べ物を見つける手伝いをしたい」と、エルクリーフは言う。「それは、ペースを落とし、よりマインドフルになり、体に気を配り、ある食べ物を食べたときに自分がどう感じるかに気づくことだ」。

(執筆:Richard Schiffman、翻訳:中丸碧)
(C)2019 The New York Times News Services

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