売れっ子工業デザイナーが考える「理想の電車」 言葉にできない心地よさを「カタチ」にする

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柴田氏は続ける。

「ヨーロッパに行くと電車がとても心地よい。すごくグレードが高いわけではないけれど、乗っていて気持ちがいい。例えば水戸岡鋭治氏の作り出すクラシックな電車のデザインも1つの答えだと思います」

西武鉄道の新型特急「ラビュー」(撮影:大澤 誠)

このトークショーでは、西武鉄道の特急ラビューのデザインを水戸岡氏とともに絶賛していた柴田氏。もう一度感想を聞いてみた。

「ラビューはいいですね。はじめて見たときには驚きました。あの球体のガラス張りのデザインが通るとは思わなかったので。それを実現した鉄道会社もすばらしいと思います」

柴田氏が新しい電車のデザインをするとなると、鉄道会社とどのような形で組みたいだろうか。

「企画段階から入れてもらえるほうがありがたいですね。いろいろ決まってからではなく、企画の最初の段階から参加させてもらってチームの一員としてデザインしたいです。そのほうがよいものができると思います」

たった1つの答え

ただし、柴田氏は、鉄道会社に入ってたくさんの電車のデザインがしたい、というわけではないという。オムロンの体温計をデザインしたときも体温計の本質を突き詰めていって、それを形にしただけだった。体温計の役割である、温度を「見ること」と「測ること」に特化した、液晶が大きくて脇に挟みやすい形を重要視し、「たった1つの答え」として世に出した。

だから電車でも、どこの鉄道会社で、どんな場所を走るのか、通勤電車なのか、特急なのか、あらゆる条件でデザインは変わるのだろう。

「必ず適切な答えはある」という柴田氏がデザインする電車の答えとは、どのようなものなのだろう。外観は、内装は……、想像するだけでワクワクしてしまう。どこか、早く柴田氏に鉄道会社から電車のデザインの発注がないものか、ファンとして願うばかりである。

さとう ようこ ライター、宣伝プランナー

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Yoko Sato

美術大学卒業後、クルマ会社のハウスエージェンシーにて広告宣伝・販売促進のクリエイティブディレクターを務める。転職した広告代理店に勤務していたときに担当していたゲーム会社から受託し、シナリオライターに。その後、顧問として家庭用ゲームソフトの広告ディレクターおよびコピーライターとなる。現在はゲーム会社出身のママ友に誘われ、エンターテインメント系デザインプロダクションにライター&プランナーとして参加している。

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