《若手記者・スタンフォード留学記 22》スタンフォード学生も四苦八苦! 大不況下の「就職活動」
工学・化学など理系分野では、アメリカ人が少数派という学部・学科も多く、かつ、語学・文化的な障壁も低いので、留学生でも比較的就職しやすいですが、私みたいな物を書く仕事は、土着性が強く、最もアメリカでつぶしが利かないタイプでしょう(笑)。
今が不況だからということもありますが、一流のビジネススクールを出れば、アメリカでも引く手あまた、といった甘い幻想は禁物です。
「アメリカは確かにオープン。ただし、アメリカに徹底的に適応することが条件」--そうスタンフォードMBAを卒業したばかりの友人が言っていましたが、私も同感です。アメリカに大きな憧れを抱き、嬉々として適応できる人にはいいですが、そうでない人にはつらい。
そうしたハンデにもめげず、第一線でアメリカ人と張り合っている日本人もいて、彼らと話していると、本当に感心します。凛としていて、良い意味での緊張感が漂っている。彼らには、ぜひアメリカで大活躍して、いつか凱旋帰国を果てしてほしいものです。
弁護士は、不景気もどこ吹く風?
一方、弁護士などの”士業”は、景気の影響を比較的受けにくいようです。
米国労働省の『Occupational Outlook Handbook(2008-09 Edition)』によると、「不況期には、企業が訴訟を控える傾向がある一方、倒産、差し押さえ、離婚などの案件が増えるため、不況によるショックが緩和される」とのこと。
とりわけ、全米トップ3といわれる、ハーバード、イェール、スタンフォードのロースクールは弁護士界でも別格のようです。ロースクールを今年卒業する、グループワークのチームメートは、ワシントンDCの法律事務所に就職。初任給は、16万ドル(約1400万円)といいますから、驚きです。
しかし、だからといって、若手弁護士が、そんなに優雅な暮らしができるわけではないそうです。労働時間は、1日18時間になることもザラ。しかも、ロースクールの3年間に、大体20万ドル(約1800万円)はかかるそうで、莫大な借金を抱えている学生も多いとのこと。ロースクールの場合、ビジネススクールのように、5年ぐらいの勤務経験を経て、ある程度貯金して入学するよりも、学部卒業後、直接入学するケースが多いですから、金持ちのボンボンでない限り、多額の借金を背負わざるを得ないわけです。
いちばん”つぶしが利く”ということで、ロースクールの人気は不動ですが、弁護士の仕事というのは、向き不向きがかなり大きく分かれるような気がします。
彼女の友人の一人は、憧れの弁護士になってみたものの、仕事が全く合わず、1年で退職。今は、地域コミュニティを助ける仕事をしていて、幸福らしいのですが、年収が4万ドル(約360万円)に減ったため、借金の返済に四苦八苦しているそうです。
ただ、アメリカでは、学費のローンを抱えている学生を救うため、「公共機関で一定期間働けば、国が借金を肩代わりしてあげる」という制度があるそうです。国は、優秀な頭脳を公共セクターに引き抜けて、学生は借金から開放される。ウィンウィンの関係です。