日立が「武蔵野の森」に開いた研究施設の正体 同社最大の中央研究所に新設する狙いとは
開設した11日は具体的な「協創」として、さまざまな展示やデモを来場者に見せていた。中でも目を引いたのが早稲田大学との共同研究である、ドアを開けて通過するロボットだ。デモではドアノブを自ら回して通過していた。一見すると単純な動作だが、ロボットにとってドアノブを回して押したり引いたりしながら、自分の体が邪魔にならないように通過する動作は難しい。
従来であれば、複雑な開発工程で膨大なプログラミングが必要となるが、今回は学習済みの複数の動作を自律的に組み合わせてロボットの制御を行う深層学習(ディープラーニング)技術を開発。「ドアへの接近動作」「ドア開け動作」「ドア通過動作」を別々に学習しても、これらの学習済み動作を組み合わせることで、ロボットが自律的にドアを開けて通過するという一連の動作ができることを披露していた。
「自前主義」の限界
建物内を歩くと、大きな窓からは建物を囲む武蔵野の自然が多く見えるほか、全体的に間仕切りを減らしたオープンなスペースを多く設置し、シリコンバレーなど外資系企業の雰囲気に仕上げているように感じる。これまでの環境を変え、議論を活発にするように建物全体から工夫されており、顧客とともに思いついたらすぐにアイデアを共有し、どこでも試作や検証できるのが特徴だ。
日立は「協創の森」を産官学など顧客との連携や広くアイデアを募る場として活用し、新事業の創出を急ぐ構えだ。このタイミングで外部と積極的に協力し、自社の技術資源を公開しようとするのは、あらゆるモノがインターネットにつながるIoT時代を迎え、“自前主義”を限界とみているからにほかならない。
日立でCTO(最高技術責任者)兼研究開発グループ長を務める鈴木教洋執行役常務は「自社製品の開発だけでは難しくなっている。顧客の抱える問題を解決することが必要だ」と、その背景を説明する。
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