敵を友人に変える「ニューロハックス」の威力 UCLA医学部教授が教える「脳をだます」技術
フランクリンは相手によい行動(友達になる)をとらせるためにニューロハックスを用いたが、相手に行動をとらせ、その行動を振り返らせることで心をリセットするというニューロハックスのトリックは、あらゆる行動に使える。
たとえばテロリスト集団は、人々を組織に引き込むためにニューロハックスを使っている。組織のウェブサイトを見たり、詳しい情報を見るためにサイトに登録したりした人に、それまでとは違った考えを持つように仕向けるのだ。
その結果、「自分はテロ組織に興味があり、もっと知りたいと思っている人間だ」という新たな自己イメージを抱くようになった人は、(自らをテロリストと見なしたり、危険な行為をする意志を持っていたりしなくても)テロ組織の理念にそれまでより共感を覚えるようになる。この新たに形成されたセルフ・アイデンティティーによって、その人がテロ組織に関わる可能性は高まっていく。
恐怖の対象に思い切って飛び込むのも、ニューロハックスだ。ある研究では、女性をデートに誘うこともできず、不安やぎこちなさ、男性としての自信のなさを感じている男性被験者を、女性とペアになって12分間会話をさせたところ、「不安やぎくしゃくした振る舞いが減ったと感じる」と感想を述べた。
この効果は翌日になっても消えなかった。半年後のフォローアップ調査でも、被験者はそれまでよりもはるかに社交的になったと感じ、女性とも頻繁にデートをするようになっていた。
心は変えなくていい、まずは動こう!
私たちが現実世界で直面する問題には、目に見えないものがある。それが心の中で起きているからだ。大きな苦しみの原因である自己評価の低さや抑うつ、中毒症、痛みはすべて、脳内で生じている。
世間一般では、不安などの精神的な問題であれ、趣味を続けられないといった些細な問題であれ、それを乗り越えるには“まずは心を変えるべきだ”と考えられている。思考を変えれば、行動が伴う、と。
だが、“静止している物体はそのまま動こうとせず、動いている物体はそのまま動き続けようとする”という慣性の法則に似て、「なし遂げる力」も、心を変えることではなく、まず動くことから始まる。ランニングシューズを履くことを夢想するのではなく、実際に履くことによって変化は起こる。これがニューロハックスの原理だ。
人類は、飛行機やコンピューター、新しいワクチンを開発するために数百年前から物理学の法則を用いてきた。これと似た力を活用するニューロハックスは、私たちが行動を通じて人生や世界を変えるために使える、行動の力なのだ。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら