視聴率20%たたき出す「鹿児島最強番組」の中身 視聴率三冠王・南日本放送は何がスゴいのか
「てゲてゲ」はもともと、深夜番組がゴールデンタイムへ“昇格”して衣替えされたもの。深夜時代から同番組の立ち上げを手掛けたのは、ラジオからテレビへ異動したディレクター。人事異動は「テレビをラジオ的にやろう」という中村会長の判断だった。
番組ではラジオの録音機を使うような感覚でディレクターが小さなカメラを持ち単独取材するといった手法も採用。テレビ番組では通常、カメラマン、音声の調整などを担当するVE(ビデオ・エンジニア)、ディレクターの3人程度のチームで取材に臨むことが多い。「井戸端会議風で小ネタが満載」と中村会長は話す。
2018年には3年連続で「三冠王」を達成
ラジオのミニコミ誌的な手法をテレビにも取り入れる。ラジオと同様、「暮らしのメディア」として地域と徹底的につながりを図ろうとする……。そうした戦略が奏功し、「てゲてゲ」は高視聴率を維持。10%台半ばで推移しており、20%を稼ぐ回もある。
実はゴールデンやプライムの時間帯で、ローカル局の自社制作番組が2ケタ台の視聴率をたたき出すのは容易でない。キー局に比べると制作予算が限られており、コンテンツ力の面などでどうしても見劣りしがちだからだ。多くのローカル局では「ゴールデンやプライムの時間帯には(高い視聴率を稼ぐことができる)キー局の番組をネットで受けてほしい」といった営業現場の声が強い。
その点、MBCの場合には「てゲてゲ」に続く毎週水曜午後8時からの時間帯にも「どーんと鹿児島」という自社制作番組を放映している。自社コンテンツに対する自信の表れといえるだろう。
2018年には3年連続で視聴率の三冠王を達成した。「三冠王」は「ゴールデン」「プライム」「全日」の各時間帯で年間平均視聴率1位になることを意味する。TBSをキーとするテレビのJNN系列28局のうち、3年連続三冠王はMBCだけだ。「地域密着の度合いでは先頭を走る存在」。系列局の幹部はこう評価する。
「地域の人々の幸せを追求することが、会社やそこで働く人々にとっても幸せなはず」(中村会長)。「公共性でメシを食う」ことこそ、中村会長が2006年の社長就任以降、10年以上にわたり経営者として葛藤を続けた中でたどり着いた結論である。そこに「ローカル局の生き残り策」という発想はない。
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