北朝鮮の非核化問題は「三すくみ」状態に 米、韓、北朝鮮のトップ発言を読み解く

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しかし、文大統領の考えは、北朝鮮の完全非核化という「ビッグ・ディール」を求めるトランプ大統領が受け入れるものではなかった。

ハノイの米朝首脳会談でも寧辺の核施設の廃棄と引き換えに経済制裁解除を求めた金委員長に対し、トランプ大統領は核施設リスト申告や大量破壊兵器の凍結・廃棄という「最終的かつ完全に検証された非核化」(FFVD=final, fully, verified, denuclearization)を譲らなかった。

文大統領との会談でも、トランプ大統領は「今私たちが行っているのはビッグ・ディールだ」「北朝鮮に対する制裁はさらに強化することも可能だが、現状が維持されなければならない」と強調している。さらに文大統領が求めた開城工業団地などの再開は「今はその時ではない」と拒否した。3回目の米朝首脳会談については「急げば、きちんとした交渉にならない」などと否定的だ。

文大統領を嫌うトランプ大統領

どうやら文大統領の要求はことごとく否定されたようである。しかし、ここは外交の世界である。トランプ大統領は「南北首脳会談やほかの接触を通じて把握した北朝鮮の立場をできるだけ早く私に知らせてほしい」と付け加えることも忘れなかった。

もともとトランプ大統領と文大統領は肌が合っていないようである。トランプ政権の内情が赤裸々に描かれていることで話題になったボブ・ウッドワード氏の著作『FEAR 恐怖の男』(日本経済新聞出版社)には、文大統領について次のような記述がある。

「文在寅大統領との数回にわたる秘密電話会談で、トランプは米韓で結んでいるKORUS(米韓自由貿易協定)などへの批判を強めていた。(中略)トランプは文在寅を嫌っていたうえに、2人の関係は悪化していた」

「トランプは文在寅を散々けなした。同盟国に対して怒りをほとんど隠そうともしない態度は外交手腕としては最低だが、トランプはそういうやり方を好む。国家と国家の関係をぶち壊す寸前まで達していた」

「韓国がどうして友好国だといえるのか。トランプは質問した。トランプは一年間、ずっと憤激していた。満足の得られる答えが得られなかったためだ」

今回の文大統領の訪米も韓国側は4月初めを希望したが、制裁緩和を求める文大統領に対し、トランプ大統領が「それなら会う必要がない」と難色を示したため、1週間先送りされたという。

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