英国のEU離脱は労働党との妥協で「穏健路線」に

10月31日までの離脱期限延期で何が起きるか

EUとは10月末までの離脱期限延長で合意した。トゥスクEU大統領(左前)、メイ首相(右後ろ)とメルケル独首相(右前)(写真:ロイター)

4月10日に開催されたEU首脳会合では、英国のEU(欧州連合)離脱期限が2019年10月31日まで延期されることが決まった。英国のテリーザ・メイ首相は、19年6月30日までの離脱期限延期を要請していたが、EU側は離脱方針が定まらない中での短い延期を認めなかった。

延期期間をめぐっては、19年6月30日までの短期間の延期を主張するフランスと、19年12月までの長めの延期を主張するドイツなどが対立し、結果的に双方の主張の間をとって、10月31日までの延期となった。フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、英国がEUに長い間とどまることで、例えば新首相が強硬離脱派議員の中から選ばれ、EU統合の深化を妨げるような政策をとる事態を懸念しているとされる。

離脱期限延期は「前倒し離脱条件付き」とされ、英下院での離脱協定批准とEUとの最終合意など離脱の条件が整えば、10月末を待たずに離脱することが可能とされた。また、6月末の時点で、英国側の離脱協定批准に向けた行動のチェックが行われることとなった。英政府はできる限り早期の離脱を目指すが、EU法によって5月23~26日の欧州議会選挙への参加準備を進めることとなった。

新たに与えられた約6カ月の猶予期間に何が起こるのか。以下では、まず短期的に想定されるシナリオを整理し、そのうえでブレグジット(英国のEU離脱)の着地点について考察する。英国がEUと離脱協定を締結し、ブレグジットが実現するまでの道のりはまだ長く、不透明である。

まず英政府は、メイ首相がすでに与党の強硬離脱派の説得をあきらめたため、野党労働党と離脱後の英・EUの将来関係について合意を目指し(以下「与野党合意」とする)、英議会でのコンセンサス形成を狙うこととなる。その上で、昨年11月に英政府・EU間で合意された「EUと英国の将来関係を定めた政治宣言(Political Declaration)」の修正交渉をEUと行うことになろう。EUが政治宣言の修正に応じた場合、同じく昨年11月に合意された「離脱協定(Withdrawal Agreement)」と政治宣言を英下院での採決にかけ、ブレグジットに必要な英下院の承認を目指す。

労働党は「ボリス・プルーフ」な合意を要求

労働党への協力要請は、英政府が穏健な離脱路線に方向転換することを意味している。労働党に協力を要請する以上、英政府は労働党の要求に応じる必要がある。ジェレミー・コービン党首が率いる労働党は、EUとの関税同盟の締結やEU単一市場との緊密な関係の維持を党の方針としている。同党は、離脱協議の結果の是非を問う再国民投票を容認しており、これは離脱の取りやめにつながりうる。

労働党は首相が誰であれ与野党合意が維持されるような法的保証を英政府に求める公算が大きい。メイ首相は、EUとの離脱協定が締結された後に辞任する意向を示している。労働党からすれば、辞任後の新首相がボリス・ジョンソン前外相のような保守党の強硬離脱派であった場合でも与野党合意が守られていなければ、合意の意味がない。英タイムズ紙は、こうした法的保証付きの与野党合意を「ウォーター・プルーフ」ならぬ「ボリス・プルーフ」付き合意と報じている。

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