英国のEU離脱は労働党との妥協で「穏健路線」に

10月31日までの離脱期限延期で何が起きるか

ブレグジットの先行きは複雑で不透明だが、「合意のある離脱」、「合意なき離脱」、「離脱取りやめ」といった可能性のうち、最終的には合意のある離脱が実現するだろう。合意なき離脱は英・EU共にメリットがなく、そういった事態は発生しないと予想している。

合意のある離脱では、離脱協定が合意の基本となる。メイ首相が交渉した離脱協定はEUも承認したもので、EUはこの協定以外の離脱協定を受け入れる姿勢は示していないからだ。英国は、離脱協定に基づく離脱の後、EUとの関税同盟締結や単一市場残留のような穏健な離脱を目指すのか、EUとFTAを締結するなどややEUと距離を置く将来関係にするのか、あるいはWTO(世界貿易機構)ルールの下で何の協定も結ばないのかといった選択を迫られる。

「離脱取りやめ」もハードルが多すぎる

ブレグジット後の英・EU関係は、「離脱協定+関税同盟」、「離脱協定+FTA」、「離脱協定+WTO」などからの選択となるが、現在は「離脱協定+関税同盟」が選択される可能性が相対的に高まっている。英国が離脱協定の修正をあくまで望むことは可能だが、そのうちアイルランド島のバック・ストップ問題に関する部分の修正に、EU側は応じていない。今後英側で離脱強硬派政権が誕生した場合であっても、EU側の対応は変わらないだろう。

「離脱取りやめ」については、その可能性は高まっているものの、英下院で過半の支持を得るには至っていないうえ、実施までには越えねばならないハードルが多い。解散総選挙の実施や、そしておそらく労働党への政権交代が必要であり、その上で国民投票法を成立させ、国民投票で「EU残留」という結果を得る必要がある。これらの実現には1年以上かかる可能性が指摘されており、再国民投票実施の場合には、離脱期限の再延期が必要になる。

他方で、「合意なき離脱」については、現在の英下院がこれを能動的に選択する可能性は低い。また、仮に解散総選挙になったとしても、世論は合意なき離脱を支持していないので、合意なき離脱を支持するような強硬離脱派議員が過半を占める下院になるとは考えにくい。

10月末までに英下院での方向性が定まらなければ解散総選挙の可能性が高まり、やはり離脱期限の再延期が必要になる。しかし、前述のとおりフランスが今回の首脳会合で示した厳しい姿勢を踏まえると、10月に離脱期限の再延期を申請する場合のハードルは今回よりも高いものとなろう。

そのため、EU側が英国の離脱期限延期要求を認めずに、なし崩し的に離脱期限が過ぎてしまい、合意なき離脱が事故的に起きるシナリオがありうるが、実際にはそれも考えづらい。合意なき離脱の容認は、EUにとっても非常に危険な賭けであるからだ。合意なき離脱に伴う不確実性の上昇によりEUが景気後退に陥るリスクが高まれば、最終的には失業率の上昇を通じて政治的な不安定化にもつながる可能性がある。

英国が実際にEUを離脱するのはいつになるのか。英国で与野党合意に成功すれば、5月22日までに英国は離脱することになる。他方で、英下院の方針が定まらずにメイ首相が辞任し、解散総選挙となれば、10月末までブレグジットはもつれ込むことになる。

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