「池袋プリンス」ワンフロア丸ごと大改装の中身 「IKEPRI25」から見るキャラクター活用新戦略

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4月6日からコラボしている「Fate/Grand Order」は、2015年にリリースされたスマホ向けRPGゲームだ。ゲームのほか、コミックや舞台、コンサートなど幅広いメディアに展開され、2019年からはアニメも放映予定の人気沸騰中の作品である。コンセプトルームは作中の舞台の名前を取り「ホテルカルデア」と名付けられた。

毎年夏には、周年を記念したリアルイベントが幕張メッセなどで開催されているほか、3月に開催された世界最大級のアニメイベントAnime Japan 2019でもブースやステージがあり、多くの参加者を集めていた。このほか都内や地方都市でファン感謝祭的な意味合いのイベントも開催され、キャラクターのパネルや作品中に登場する背景に似せた写真撮影コーナーなど、ファンにとってはゲームだけでなく、イベントに参加する、といった楽しみを見いだせる作品である。

このように、トップクラスのコンテンツとのコラボレーションとなっている。実際、「ホテルカルデア」開催中の予約は非常に困難であるため抽選が行われている。

「ホテルカルデア」の概要

今回のコラボレーションは、キャラクターの中でも人気の8人を4つの部屋に分け、それぞれ「黄金の間〜王たちの戯れ〜」「ルーム・キャメロット〜ホリデー・イン・アヴァロン〜」「ベーカー街〜親愛なるサイドキックへ〜」「坂本探偵事務所〜お竜さんもいるぞ〜」と名付け、キャラクターのパネルやそれに合わせた内装や小道具が用意されている。

コンセプトルーム「坂本探偵事務所〜お竜さんもいるぞ〜」内のキャラクターパネル(筆者撮影)

また、スリッパやタオルもコンセプトに合わせたものを用意。

宿泊者向けのラウンジには、作品の関連映像を楽しめるシアタールーム、関連書籍の閲覧やゲームを大画面で楽しめるブリーフィングルーム、作中に登場するアイテムやキャラクターのフィギュアやボードゲームを展示したミュージアム、ゲーム内の音楽を楽しめるミュージックルームがある。

このように、1フロアをすべて使うことは単なるコンセプトルームとは大きく異なる。部屋を一歩出たら違う世界なのではなく、エレベータに乗らない限り、宿泊者は同じ世界観を味わうことができる。

専用ラウンジの1つ、ミュージアム(サンシャインシティプリンスホテル提供)

宿泊業界において、キャラクターを活用した客室を用意する動きは、これまでも多くのホテルで取り組まれてきた。客室だけでなく、ツアーとして楽しめるようなパッケージなど、エンターテインメントの要素を加えたサービスも多く開発されている。ディズニーリゾートのホテルのように、テーマパークとホテルの連続性を限りなく高める取り組みは、リゾート型ホテルにおける優良事例として捉えられる。

IKEPRI25の取組みは、「ホテルの1フロアを別世界にする」取組みであり、いわばテーマパークとホテルの境目を薄くしてゆくような形である。ラスベガスのホテルのように統一したテーマのもとで作られたホテルは多く存在するが、キャラクターの活用という視点ではおそらくこの取組みは初めてであろう。ほかのホテルも追随し、日本発のキャラクターの活用がさらに広まるか、注目される。

中村 仁 跡見学園女子大学観光コミュニティ学部准教授

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なかむら じん / Jin Nakamura

宇都宮大学卒業、京都大学大学院法学研究科修了。東京工業大学より論文による博士(学術)を取得。東京大学大学院情報学環特任講師などを経て、2019年から現職。東京大学大学院学際情報学府客員准教授などを兼務。専門は観光メディア論、社会情報学。著書に『クリエイティブ産業論 ファッション・コンテンツ産業の日本型モデル』(慈学社)などがある。

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