フランスモデル界が抱える業界タブーの真相 明確に示されない契約、生活費は仕送りも
2019年秋冬パリコレクションが2月25日~3月5日まで開催された。パリの街は、まるで雑誌から飛び出したような美しいモデルたちの姿があちこちで見られた。彼女たちの多くは、有名ブランドの広告や雑誌の表紙を飾ることを夢見て、日々努力する10代や20代の女の子たち。世界中のファッションショーを歩き、豪華なパーティーに参加し、なんとも羨ましい日常を送っているイメージだ。しかし、実際は苛酷な現実―「借金」―に縛られているモデルが少なくないという。
パリコレを歩くことを夢見てモデルになったエミリー(仮名)も、そんな一人だ。早朝から夜まで雑誌のファッションページの撮影の仕事をしても、収入はお小遣い程度。報酬の代わりに、その日撮影した写真を手渡されることもある。事務所からニューヨークで開催されるファッションウィークのオーディションを受けるように勧められ参加したものの、旅費を負担しているのが自分だったことに気付いたのは、しばらくたってからだった。
彼女はこの仕事を始めてから2年が経つ。その間、どれだけ働いても常に約2000ユーロ(約25万円)の借金を事務所へ抱えていたという。
ファッションウィーク参加で借金が膨らむ?
このような「モデルが抱える借金問題」はこの業界のタブーだと、モデルの人権擁護アソシエーション「モデル・ロー(Model Law)」の共同創設者エカテリーナ・オジガノバ氏(26)は漏らす。
フランスを拠点に自身もモデルとして活躍するオジガノバさんは、こうした劣悪な労働条件からモデルを守るため、法律家、経済学者、元モデルの人権活動家のメンバーと共に、モデルへの情報提供やアドバイスなどをしている。同氏はモデルが事務所に借金をする仕組みについてこう話す。
「モデルは自身のキャリアを始める際に、まず必要な写真資料を撮影します。ある事務所は、この撮影費をモデルに『前貸し』することを明確に伝えないまま、翌月のモデルの給与から差し引く。これらの『前貸し』がたまり、借金からスタートするモデルも少なくない」