フランスモデル界が抱える業界タブーの真相 明確に示されない契約、生活費は仕送りも

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借金を抱えているモデルたちは、実際にどのように生活をしているのか。学生だと家族からの仕送りや、アルバイトをして生活費を工面するモデルもいる。

「第二のキャリア」の壁に直面するモデルも

一方で、モデル業とアルバイトで多忙な日々を送り、10代、20代で他の分野の経験やスキルを得ることができず、一定の年齢になって「第二のキャリア」の壁に直面するモデルも少なくない。

「モデルたちは学校や語学スクールに通っても、事務所から『明日仕事があるから』などの連絡が入り、勉強に専念することが難しい。さらに、オーディションでは長い待ち時間で多くのモデルが時間を無駄にしています」と、オジガノバ氏は話す。

同氏はモデルの仕事によりその後の人生を犠牲にしたり、借金に縛られるのではなく、ポジティブな経験にしてほしいと願う。

「モデルの仕事は才能溢れるデザイナーやアーティストと出会い、刺激を受けることのできる仕事です。だからこそ『モデル』という仕事が若い人たちの人生の大切な経験になるようサポートしていくことが目標です」

「取り組むべき問題はモデルへの情報の欠如です。現在、モデルだけでなく、彼女達の保護者からも契約内容の相談などの連絡を受け、アドバイスをしています。今後アジアも視野に入れ、モデルの労働組合や法律家などパートナーを増やし、不当な条件で働くモデルたちの状況を変えていきたいです」

[執筆者]
西川彩奈/フランス在住ジャーナリスト。1988年、大阪生まれ。2014年よりフランスを拠点に、欧州社会のレポートやインタビュー記事の執筆活動に携わる。過去には、アラブ首長国連邦とイタリアに在住した経験があり、中東、欧州の各地を旅して現地社会への知見を深めることが趣味。女性のキャリアなどについて、女性誌『コスモポリタン』などに寄稿。パリ政治学院の生徒が運営する難民支援グループに所属し、ヨーロッパの難民問題に関する取材プロジェクトなども行う。日仏プレス協会(Association de Presse France-Japon)のメンバー。
「ニューズウィーク日本版」ウェブ編集部

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