廃止された鉄道の「復活」はどうすれば可能か 再開させるための法律は今のところないが…

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JR石勝線夕張支線の終点だった夕張駅(筆者撮影)

もし夕張支線を、夕張市が「鉄道が必要である」と判断して復活を模索する場合、駅などで結節する路線バスやコミュニティーバス、タクシーなども含めた地域公共交通網形成計画を策定し、国土交通省の承認が得られれば、国から事業費補助が受けられる。

2018年3月末で廃止された三江線のように、路線が長く2つの県にまたがるうえ、同一県内でも各自治体による温度差が大きかった地域では、地域公共交通網形成計画は策定しづらくなるが、幸いなことに夕張支線は、全区間が夕張市に属している。

地域公共交通活性化再生法や地域公共交通確保維持改善事業は、前述のとおり廃止された鉄道を復活させるための法律や制度ではない。ただし前者は、廃止でなく「休止」であるならば効力を有するため、鉄道として復活させることも可能となる。

いきなり廃止された鉄道を復活させる法律を作ることが困難であるならば、地域公共交通活性化再生法を改正し、インフラが沿線自治体に無償譲渡された場合などは「休止」に準じた扱いとして、鉄道の復活を模索できるように法改正を行うべきである。それで実績を作り、廃止された鉄道を復活させる法律の制定を目指せばよいだろう。

財源確保をどうするか

廃止された鉄道を復活させるには財源確保が重要である。そのために、公共交通の維持・活性化の財源として「交通税」の導入などが考えられる。

また、政府は2024年度から、個人住民税と合わせて「森林環境税」を徴収する予定である。これは手入れされずに荒れ果てている森林を治山治水や国土の保全などの名目で再生させることを主目的としているが、すでに同様の趣旨で独自の税金を課している県なども多い。

用途が重なるこれらの税金の一部を、公共交通の維持やサービス改善に活用することを検討してもいいだろう。山林の間伐が進み、都会から僻地などへの人口移動が伴えば、過疎地が活性化し公共交通の利用にも結び付く。

さらに地元の銀行などを巻き込んで、復活させた鉄道駅の周辺に住宅を建設する人の金利を下げるなどすれば、駅を中心としたコンパクトシティー化に結び付くほか、道路交通渋滞の改善や交通事故の減少にも効果がある。また、その地域の地価が上昇し、各自治体に入る固定資産税が増える可能性もある。このほか、県庁や自治体役場などの駐車場を有料として、その資金を公共交通の維持やサービス改善に使用することも考えられる。

廃止された鉄道を復活できる環境を整えるには、まず地域公共交通活性化再生法を改正して、廃止された路線でも路盤が残っていれば「休止」に準ずる扱いとして、復活を模索できる形とするべきだろう。

堀内 重人 運輸評論家

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ほりうち しげと / Shigeto Horiuchi

1967年生まれ。立命館大学経営学研究科博士前期課程修了。運輸評論家として執筆や講演活動、ラジオ出演などを行う傍ら、NPOなどで交通問題を中心とした活動を行う。著書に『ビジネスのヒントは駅弁に詰まっている』(双葉新書)、『観光列車が旅を変えた: 地域を拓く鉄道チャレンジの軌跡』(交通新聞社新書)、『地域の足を支える コミュニティーバス・デマンド交通』(鹿島出版会)ほか。

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