廃止された鉄道の「復活」はどうすれば可能か 再開させるための法律は今のところないが…

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一方で、廃止された鉄道が復活した事例がある。

2003年12月に廃止されたJR西日本・可部線の可部―三段峡間のうち、可部―あき亀山間の1.6kmは2017年3月4日に鉄道として復活した。このような事例は、わが国では恐らく最初であり、わずか1.6kmとはいえ非常に重要な意味を持つ。

わが国には廃止になった鉄道を復活させる法律や制度がないため、同区間の復活は、法律上は「新規開業」という位置付けになった。2008年には広島市やJR西日本をはじめとする交通事業者による「JR可部線活性化協議会」が発足、2010年に「JR可部線活性化連携計画」が策定され、復活は同計画に基づいて行われた。

同区間の鉄道としての復活が可能となった背景として、可部―三段峡間が廃止された後も、可部から先、あき亀山駅付近の旧河戸駅までの間については路盤が道路に転用されたりせずに残っていたことも影響している。

可部―河戸間は宅地開発などが進んでいたため、この区間は廃止せず鉄道として存続させるという考えは、廃止直前の2003年ごろであってもJR西日本内に存在していた。

だが、可部線は横川―可部間が直流1500Vで電化されているのに対し、可部―三段峡間は非電化であった。仮に可部―河戸間を鉄道で存続させた場合、この区間だけ気動車を運行せざるをえなくなり、非効率であった。可部―あき亀山間の復活にあたっては、この区間も直流1500Vで電化を行い、広島からの直通電車を運転できるようにした。

法的に廃線復活は可能か

可部線の終点、あき亀山駅。一度廃止された区間だったが、電化・延伸により事実上の復活を遂げた(写真:トシチャン/PIXTA)

可部線の可部―あき亀山間は宅地化した地域で利用者数が多く、このような復活事例がほかに可能かどうかは検討を要するが、廃止された鉄道を復活させるための法律や、そのための財源確保に向けた検討はされるべきである。

2014年の地域公共交通活性化再生法改正により、同年11月20日から「地域公共交通網形成計画」が施行された。これは廃止された路線を復活させるための制度ではなく、都市計画の一環として位置付けられる制度である。だが、鉄道だけでなく路線バスなども含め、公共交通を「ネットワーク」として考えるようになるなど、従来と比較すれば進歩が見られる。

この制度では、自治体が地域公共交通網形成計画を策定し、事業内容を国が精査して内容が「有効」と判断されれば、補助金が支給される。社会インフラの整備に関しては「新駅の設置」「交換設備の設置」が多い。

可部線の可部―あき亀山間の復活は地域公共交通網形成計画が導入される以前の連携計画であるが、今後このようなケースでは地域公共交通網形成計画への位置付けが必要である。

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