渋谷で飲む人は終電より「始発時間」を気にする 経路検索データが示すナイトタイムの実態

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夜の渋谷駅前。ナイトタイムの充実はインバウンド振興の要である(写真:まちゃー/PIXTA)

花見、歓送迎会をはじめ、4月は飲み会が盛んな季節。できれば2次会、3次会と盛り上がっていきたいところだが、「そろそろ電車が……」とメンバーはボロボロ抜けていく。あるいは「閉店です」と、店から追い出される。

「せめてもう少し終電が遅ければ……」「せめてもう少し遅くまで店が開いていれば……」

こんなふうに思ったことがある人は少なくないだろう。

ナイトタイムの充実は、古くからの課題だ。1990年前後のバブル時代には、「せっかく欧米並みの文化施設ができたのに、余韻を楽しむ飲食店がない」「コンサートや劇のスタート時間が早すぎる」「ライトアップがなくて街が殺風景」といった不満が高まった。欧米のナイトタイムを経験した日本人たちが、日本の不備に気づいたわけだ。

現代の日本における不満の主役はインバウンドだ。海外の主要都市では、店でも娯楽施設でも夜遅くまで開いていて夜遊びに困らない。交通事情も充実している。24時間地下鉄が動いている都市もあるし、タクシー代が安い都市もある。だから時間を気にせず遊べるわけだ。こうした環境を当然と思って日本にやってくると戸惑うことになる。

消費者目線と事業者目線

経路検索エンジンを手がけるナビタイムジャパンのインバウンド事業部部長・藤澤政志氏は「消費者目線では、ナイトタイムは充実したほうがいいし、公共交通も遅くまで動いているほうがいい。しかし、事業者の視点に立つと、そう簡単にできるものではありません」と話す。同社は、2016年から2018年にかけてナイトタイムの行動分析をした。活用したのは顧客の検索結果を蓄積したビッグデータだ。

「調査をしようとしたきっかけは、渋谷区観光協会が主催したイベント『PLAY! DIVERSITY 2020』に参加したことです」(藤澤氏)

このイベントのテーマは、オリンピック・パラリンピックを契機に、渋谷の街はどう変化し、また、有形・無形のレガシーをいかに創出し、観光資源に生かせるか。ナイトタイムに関する議論も活発に行われた。その1つが飲食店の従業員の帰りの交通手段の確保の難しさについてだった。

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