EU離脱へ英国メイ首相「最後の決戦」の切り札 解散総選挙で「穏健離脱」より「合意なき離脱」

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まず、強硬離脱派に対しては、議会主導で穏健離脱や国民投票のやり直しに向かうおそれが一段と高まることが、さらなる説得材料になる。1日の代替案の採決に合わせて、3日も代替案の審議時間の確保に動いており、議会は代替案受け入れでの政府への圧力を強めようとしている。

また、閣外協力するDUPは、3度目の受け入れ拒否後も、政府案を受け入れるかどうかで揺れているとの報道もある。解散・総選挙の可能性が高まることが、DUPの方針転換を促す可能性がある。2017年の総選挙で過半数を失ったメイ政権にDUPは閣外協力しており、かつてない国政での影響力を保持している。英国の一体性を重視するユニオニスト政党のDUPは、アイルランド再統一派(ナショナリスト)のシン・フェイン党と近い労働党のジェレミー・コービン党首の首相就任を望んでいない。

最後に野党議員だが、27日の代替案の投票では、20名前後の労働党議員が穏健な離脱や国民投票のやり直しに反対票を投じている。これらは保守党とDUPの票が固まれば、潜在的に政府案の支持に回る層とみられる。

とは言え、説得相手のプロファイルをみる限り、4度目の正直がかなりのナローパスであることは間違いない。おまけに4度目の投票実施には、同一会期内に同じ内容の採決を否定する議事規則をどう迂回するのかという問題もある。この点については、離脱協定を実行に移すための法案とセットで採決にかける可能性が取り沙汰されている。合意なき離脱の回避には同法案の可決が必要なため、合意受け入れを迫るもう1つの材料となる。メイ首相とその離脱案にとっておそらく最後となる戦い、その勝敗の行方に注目が集まる。

1日の代替案の採決に法的拘束力はなく、保守党分裂を招く代替案の受け入れを政府は拒否するとみられる。政府が代替案の受け入れを拒否し続ける場合、議会は単に代替案の審議時間を確保するだけでなく、より直接的に政府の行動を縛る手段に出る可能性がある。例えば、代替案の協議を開始するという内容の法律を議会で可決することが考えられる。政府は代替案の採決結果に拘束されることはないが、それを定めた法律には拘束される。

メイ首相は解散カードを切る可能性が高まる

ただ、関税同盟を軸とした穏健離脱に舵を切れば、ただでさえ弱体化したメイ政権の空中分解は避けられない。議会が政府に代替案の受け入れを迫る場合、政府はこれに従うのではなく、むしろ議会の解散カードを切る可能性が高い。他国と自由に貿易協定を結ぶことができない関税同盟残留は、保守党の政策綱領(マニフェスト)に違反するうえ、国民投票の結果を完全に踏みにじる行為として牽制する発言が相次いでいる。

英国では2011年議会任期固定法で首相の解散権が制限され、任期前解散には、下院の3分の2以上の賛成か、内閣不信任案の可決(正式には不信任案の可決後、14日以内に同一もしくは別の内閣が信任されない場合)が必要となる。労働党のコービン党首は3度目の投票が否決された後、代替案を受け入れない限り、メイ首相の即時退陣と総選挙実施を要求した。メイ首相が議会の解散を提案すれば、その要請を断る理由はない。4月10日の欧州首脳会議を前に、解散・総選挙を理由に離脱協議期限の再延長を要請する公算が大きい。

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