最速の特急「はくたか」を失った北越急行の今 かつての大動脈は「地域密着」でどう稼ぐか

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経費節減にも取り組む。ほくほく線はほとんどの区間がトンネルや高架であるうえ、「はくたか」が時速160km運転をしていた関係もあって施設の保守のコストが莫大。それでも「はくたか」現役時代から比べると3分の1ほどに圧縮しているという。

昨年12月に行った運賃の値上げを伝える案内が駅の待合室に張られていた。「はくたか」なき今の収入を確保するための取り組みのひとつだ(筆者撮影)

「安全が第一なのでどうしても限界はありますが……。できる範囲でやるべきことをやっていく。ご迷惑をおかけしますが運賃の値上げもさせていただきました。そして少しずつでも地域の鉄道として愛される存在になっていく。そこが今のほくほく線にとっていちばん大切なことですから」(大谷さん)

今はまだ、「はくたか」時代の貯金が豊富に残っている。しかしそれもいずれは底をつく。そうしたときに、ほくほく線を存続させるためには沿線自治体などからの支援が欠かせない。

だからこそ、まだ余裕のある今のうちに、地域住民との関係を強めて名実ともに“大動脈の鉄道”から“地域の鉄道”に――。

「いらない」と言われないように

大谷さんは「地域の鉄道の命運は地域の人が決める」と話す。

まつだい駅には御影石で作った「はくたか」の記念碑がある。2016年4月、地元の園児を招いて除幕式を開催した(編集部撮影)

「もし、いつの日か地域の皆さんが『ほくほく線はいらない』といったらそれはしょうがないと思うんです。われわれが決めることじゃなくて、地域の方々のための鉄道ですから。でも、いらないと言われないためにやれることはなんでもやっていかないと」

ローカル鉄道の取り組みというと観光列車などが注目されることが多いが、それに逆行するかのような北越急行の取り組み。けれど、そもそものローカル鉄道の第一の役割は沿線に暮らす人々の日常の足であること。人口減少の進む地方の町を走るローカル線が、地域の足として生き残る。ほくほく線の今後は、もしかしたらそうしたローカル線のひとつの未来を示すものになるのかもしれない。

鼠入 昌史 ライター

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そいり まさし / Masashi Soiri

週刊誌・月刊誌などを中心に野球、歴史、鉄道などのジャンルで活躍中。共著に『特急・急行 トレインマーク図鑑』(双葉社)。

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