「通帳・ハンコ・支店」が「オワコン」になる日 デジタル化で銀行から消える「フリクション」
しかし、現在の銀行にとって、そうした新しい世界への移行は大きなチャレンジとなる。銀行が保有するプロセスやシステムは、基本的にデジタルが存在しなかった時代に構築されたものであり、コンピュータリゼーションの進化にそってそれを徐々にITに置き換えてきたため、基本的にはもとの仕組みをなぞっているからだ。銀行を取り巻く規制の仕組みも同様であり、既存のものとの整合性や調和を崩さずに新しいものに乗り換えていくのは、デリケートかつ膨大な作業だ。
しかも、テクノロジーは進化を止めないから、次々と登場する新しい技術やサービスに適応していかなければならない。一方で、テクノロジー企業やフィンテック企業は、レガシーの存在を意識せずに新しいデジタルの仕組みを考案可能だ。
デジタル化「以前」の仕組みに立脚する既存銀行
その中で、デジタル化を積極的に取り込む変革に取り組む銀行も登場している。例えば『Bank4.0』にも登場するシンガポールのDBSは、2018年、新たなブランドプロミスとして「Live more, Bank less」を掲げた。銀行取引の面倒をなくし、顧客がより充実した人生や生活を送ることを支援するという趣旨である。
そのために、CEOピユシュ・グプタの旗振りの下に、バンキングをinvisible化(見えなく)してカスタマージャーニーの中に組み込もうと、商品・サービスではなく顧客を中心に考え、必要なテクノロジーを積極的に採用し、オープン・イノベーションを活用して銀行全体のトランスフォーメーションを推進している。
日本でも多くの銀行で、デジタル戦略部などの組織が立ち上がり始めた。しかし、デジタル化は、社会、経済、企業、個人のすべてを否応なしに巻き込んで進むものだ。
顧客への係わり方、仕事の仕方、組織のあり方といったあらゆる側面での変革が求められるものであり、「デジタル化は所管部に任せてある」という意識では、ボタンを掛け違っている。さらにテクノロジーの進化は速く、「他行事例を見てから」では時すでに遅しとなる可能性は高い。そのような銀行は、「表舞台から姿を消す」だけでは済まなくなるかもしれない。
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