韓国自転車シェア、ヘルメット義務失敗のワケ

他人の被ったものはイヤ、利用せずに盗難も

さらに、ソウル市は2015年10月から自転車シェアリングサービス「タルンイ」を開始した。当初は貸出返却スポットを地下鉄駅の近くに設置するなど、公共交通機関を補完する意味合いが強い市民向けサービスだったが、2017年にはスポットを拡大し、会員登録が不要になるなど、旅行者にも利用の幅が広がっている。

こうして自転車の利用は拡大したが、同時に事故が急増した。自転車が絡む事故は年間1万5000件を超え、死亡者が300人近くに達したのだ。自転車の死亡事故はおよそ70%が頭と顔への衝撃で、ヘルメット未着用者の致死率は着用者と比べて2倍ほど高い。そこで政府はヘルメット着用を義務付け、2018年9月から施行されたが、このヘルメット着用義務化が新たな問題を引き起こした。

管理人が貸出しと返却を行う釜山や慶州と違って、ソウルのタルンイは無人で運営されている。ヘルメットの管理方法として、紐で自転車に結びつける案が出されたが、利用者の首にひっかかるなど新たな事故の危険があり、また見知らぬ他人が被って汗が付着したヘルメットの使用を嫌がる人も少なくない。また、タグをつけて位置を追跡するシステムを検討したが、通信費だけで年間12億ウォン(約1億2000万円)の費用がかかることがわかり断念した。

市は利用者の良心に委ねることを決め、貸出スポットに設置する保管箱等に入れて、タルンイ利用者が自由に使うことができる方式を採用するが、これが想定外の結果となった。

2万台のタルンイに対して858個の貸出し用ヘルメットを導入し、利用者の反応を見てから拡大を検討することになったが、試験開始から5日目の8月24日時点で半数近い404個が失われていたのだ。未返却に加えて自転車を利用せずにヘルメットだけを持ち去る人もいたという。結局、ソウル市はヘルメットの貸し出しサービスを諦めた。

カカオの電動自転車は成功するか

タルンイと同様、無人で運営されているカカオの電動自転車もヘルメットを備えていない。IT企業が集まる城南市板橋は通勤で利用する会社員が多く、ヘルメットを持ち歩くことはない。ヘルメットを着用せずに利用する人が多い上、地理に詳しくない人など、片手でハンドルを操作し、片手でスマートフォンを持って地図を見ながら走行する。途中で止まってスマホを確認しながら走行すると歩くより時間がかかるというのだ。

指定スポットに返却するタルンイと違い、エリア内のどこに返却しても構わないカカオ自転車は回収や充電などの管理が欠かせない。韓国に先駆けて自転車シェアリングサービスがはじまった中国は、盗難や放置など管理上の課題で、運営会社は経営難に陥っている。

カカオ自転車は開始から2週間の間、盗難や事故など大きな問題は起きていないが、これからこのサービスが成功するかどうかの鍵は維持管理体制と利用者のモラルにかかっていると言えそうだ。

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