二階氏「安倍4選ありうる」発言にざわめく自民 言いたい放題の二階氏に「幹事長交代論」浮上

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そもそも、首相の総裁3期目の任期が2年半も残っている段階で4選論が取り沙汰されるのは「ポスト安倍での人材不足が原因」(自民長老)との指摘も少なくない。

次期総裁選には、それぞれ派閥を率いる石破、岸田両氏のほか、野田聖子氏(無派閥)と河野太郎外相(麻生派)も出馬への意欲を示す。さらに、加藤総務会長(竹下派)も「つねに高みを目指す」と語り、国民的人気を誇る小泉進次郎厚生労働部会長は「2020年の東京五輪後は若い世代が日本を引っ張るべきだ」と世代交代の必要性を繰り返す。

その一方、二階氏は「菅でもいいじゃないか」と菅義偉官房長官後継説を口にするなど、ポスト安倍レースは乱戦模様だ。

メディアはポスト安倍について、「岸(岸田)破(石破)聖(野田)太郎(河野)」「岸破義(菅)信(加藤)」と書き立てるが、「本命不在で誰もが決め手に欠ける」(自民長老)のが実態。

昨秋の総裁選の党員投票で安倍首相に肉薄した石破氏は「議員レベルでの石破嫌いを払拭できていない」(自民幹部)とされ、安倍首相の「意中の後継者」(細田派幹部)とされる岸田氏も「一向に党員・党友の支持が広がらない」(自民幹部)。

「安倍4選」実現には高いハードル

野田氏は依然として20人の推薦議員の確保が危ぶまれる状況で、河野氏も日ロ交渉をめぐる「次の質問どうぞ」発言などで党内のひんしゅくを買っている。

加藤氏は竹下派所属なのに「本籍安倍派」と揶揄され、食道がんを公表して療養中の竹下派会長・竹下亘前総務会長の体調次第では「跡目争いに巻き込まれ、総裁選出馬どころではなくなる」(派幹部)。

小泉氏は父親の純一郎元首相が「まだまだ経験不足」と明言するなど、「天才子役からの脱皮にはなお時間がかかる」(自民長老)とみられている。

まさに「群雄割拠どころか、帯に短したすきに長し」(自民幹部)という実態で、前述の産経・FNN調査でも「首相にふさわしいと思う国会議員で、安倍首相の実績を超えることができると思う議員がいるか」との質問の答えは「いる」21・3%、「いない」68・4%となっている。だからこそ、安倍4選論が台頭するわけで、二階氏の発言について「自らの続投メッセージだけでなく、党内世論の先取り」(閣僚経験者)との見方も広がる。

そうした中、首相サイドからは「今後の外交戦略からも総裁任期の延長が必要」(飯島勲内閣官房参与)との声が上がっている。「日本の進路に直結する日米、日ロ外交をみても、トランプ大統領が再選すれば2期目の任期は2025年1月まで。プーチン大統領の任期も2024年5月までで、首相の任期が2021年9月で切れれば、安倍外交で築いた両大統領との信頼関係はその時点で振り出しに戻ってしまう」(同)のが理由だ。

もちろん、安倍4選には党則改正が必要で、「3選実現のための昨年の改正よりハードルはかなり高い」(自民事務局)のは事実。ただ、首相の「正真正銘」発言も、衆院解散をめぐる「片隅にもない」発言と同様に「首相の真意は別のところにある」(石破派幹部)との受け止めは少なくない。昨秋の総裁3選後も安倍1強を維持している首相にとって、「4選論は安倍外交とともにレームダック化を防ぐ最大の武器」(自民幹部)とみられている。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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