近く行われる総選挙でモディ氏率いる与党インド人民党(BJP)の苦戦が予想される中、同氏は有権者の歓心を買おうと躍起になっている。今回の自爆テロを受けてインドでは「パキスタンをたたき潰せ」と叫ぶデモ隊が現れ、これにモディ氏が乗っかった。
インドによる報復は一気にエスカレートした。200%の制裁関税から始まった報復措置は、2月下旬にはパキスタン北部バラコット付近への空爆に発展(インドはジェイシモハメドの訓練拠点を狙ったと主張)。その翌日には印パの戦闘機が空中戦を繰り広げ、撃墜されたインド空軍機のパイロットがパキスタンに拘束された。
若者から圧倒的支持を得るカーン首相
この間、パキスタンのカーン首相は一貫してテロへの関与を否定し、対話を呼びかけてきた。拘束したパイロットも解放した。実際、同氏はカシミール紛争をあおってきたこれまでの首相とは、かなりタイプの異なる政治家だ。
カーン氏が党首を務めるパキスタン正義運動(PTI)は若者から圧倒的な支持を得ている。平均年齢(中央値)が24歳というパキスタンでは、有権者に占める若者の割合が高く、そうした若い有権者の実に6割がカーン氏のPTIに票を投じた。彼らはカシミール問題には関心はなく、教育、医療、雇用の改善を求めている。
暗殺されたブット元首相のめいで若手文筆家のファティマ・ブット氏は、米紙ニューヨーク・タイムズに寄稿し、こう書いた。パキスタンでは「長いこと軍事独裁、テロ、政情不安が続いてきた。私と同世代のパキスタン人は主戦論や戦争といったものが許せない」。
カーン氏もこの点は理解しているように見える。同氏はテレビ演説でインド政府に対し「双方が手にしている兵器の性格からして、はたして判断ミスは許されるのか」と問いかけた。
印パはこれまでも衝突を繰り返してきたが、今回はパキスタンが先に和平に踏み出している。選挙を前にした短絡的な計算を脱して緊張を緩和できるかどうかは、モディ首相次第なのだ。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら