ナンバー2処刑の裏に、金正恩の裏資金 経済八方塞がりの北朝鮮

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驚愕した北朝鮮側は隠匿先がなぜ漏れたか内偵に入り、疑われたのが張氏と行政部の側近たち。張氏はかねて「中国式の改革開放に前向きな親中派」とみられていた。マレーシアとインドネシアの大使は張氏の親族が務めていた。

自信過剰とムラ気

この5月に正恩氏の名代として訪中したのが張氏でなく、現在「新ナンバーツー」とみられる崔竜海(チェリョンヘ)・軍総政治局長だったのも、「裏資金問題」が背景にあった可能性がある。

張氏への反感はすでに軍や党で強まる一方だった。それに「裏資金の内情を漏らした疑い」まで加わり、「夫は金王朝を乗っ取るつもりでは」と猜疑心を強める「女帝」、妻の金慶喜(キムギョンヒ)氏に見限られたとなれば、張氏の運命は先が見えたも同然だった。

北朝鮮は経済的に八方塞がりだ。張氏処刑後、北の当局は「経済を意図的に破綻寸前に追い込み、金正恩体制への国民の信頼を失墜させ、軍をも味方に引き入れて政変を起こそうとした」と張氏が自白したと弾劾したが、これは経済が崩壊寸前と自ら暗に認めたに等しい。

「米国は正恩氏のスイス留学時代の友人たちからも話を聞いた。当時から予測不能で暴力的、かつ誇大妄想的な人物だったと結論づけた」(米オバマ政権のキャンベル前国務次官補。CNNのインタビュー)

いまや「世界指折りの暴虐な独裁者」と国際社会の評価が決定づけられた正恩氏。北朝鮮は11月、国内全域に13の経済特区を作る外資誘致策を明らかにしたが、食指を動かす外資はまずあるまい。

どうにもならなくなった北の指導部が、またも強硬路線に踏み切るのも十分あり得る。

「14年1月下旬~3月上旬に核実験やミサイル発射、もしくは韓国への軍事挑発を仕掛ける可能性がある」と韓国の国防長官が最近発言した。韓国の一部新聞は「北を脱出した張氏側近が韓国政府に渡した軍事情報に基づいた判断」と報じた。

自信過剰でムラ気が強く、表向き阿諛追従の側近たちに囲まれた30歳の指導者は「アメリカも中国も、しょせん我が国の敵ではない」と本気で思っているかもしれないのだ。

(編集部 小北清人)

AERA 12月30日・1月6日合併特大号

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