ナンバー2処刑の裏に、金正恩の裏資金 経済八方塞がりの北朝鮮

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とりわけ重要なのがロイヤルファミリーの裏資金だ。「統治資金」とも呼ばれる。彼らが楽しむ贅沢品や別荘の関連物資、軍幹部の歓心を買うため贈られるベンツなど高級外車の購入に主として使われてきた。2012年初めの金正恩体制本格スタート以来、遊園地など娯楽施設が正恩氏の肝いりで次々と平壌(ピョンヤン)に造られた。その建設にも裏資金の一部が使われたという。

裏資金の原資は、金の国際市場への販売のほか、党、軍、政府の各機関から強制的に上納させるカネが中心とみられ、カネを海外株式市場や投資銀行で運用してもいるようだ。

故・金正日総書記の息子たち、正男(ジョンナム)、正哲(ジョンチョル)、正恩の3人が子どものころ、いずれもスイスに留学した。当時彼らを世話したスイス駐在大使が「ロイヤルファミリーの金庫番」といわれた人物だったのも、顧客の秘密を漏らさないスイスの銀行に裏資金を預けていたためだ。

金正日時代、この裏資金の調達・管理を任されていたのが「労働党38号室」という特別機関である。ところが金正恩氏の代になって間もない12年5月に38号室は解体、新たな機関に移管された。その新機関が「第三経済委員会」で、組織を実質的に取り仕切るのが労働党行政部だった。それにとどまらず、行政部は軍や党所有の他の鉱山や工場も勢力下に収め利権を急膨張させた。そのトップが行政部長の張成澤氏。11月末に銃殺された張氏の側近2人も行政部所属だ。

統治資金の証拠を確保

北朝鮮の核ミサイル開発に対する米国中心の経済制裁網の中、北の外貨は枯渇の危機にあるという。虎の子の裏資金も、かつて数百億円とも数千億円ともいわれたが、いまは減少の一途。だが世界各地に隠された裏資金の内実は厚いベールに覆われたままだ。

その裏資金にまつわる「事件」が、こんどの張氏粛清と深い関係があるという。

きっかけは13年2月に北朝鮮が国際社会の制止を無視して3度目の核実験を強行したことだった。ある中朝関係筋が明かす。

「あの核実験は中国共産党もメンツをかけて阻止しようとしたが、北は応じようとしなかった。そこで中国は『積極的な不満の表示』として、国内大手銀行の口座から北朝鮮関係を締め出す措置に出たが、もう一つ、水面下で脅しの手に出た。『金正恩氏の統治資金の証拠を確保した。内容を暴露してやる』というものだった」

ちらつかせたのは、香港、マカオ、インドネシア、マレーシア、シンガポールなどに隠した裏資金の詳細だったという。

「場合によっては香港とマカオの裏資金は凍結、他の国に隠した裏資金の公開も辞さない、と脅しに出た」(同)

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