イスラム教徒を悩ませる「愛」と「お金」の大問題 最悪の場合「牢屋に入れられる」リスクもある

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ムスリムはイスラム法にのっとった独自のルールで結婚するそうです(イラスト:『「サトコとナダ」から考えるイスラム入門 ムスリムの生活・文化・歴史』)  
世界に17億人以上いると言われるムスリム(イスラム教徒)。彼らは「ハラル食」や「ラマダン」など独自の文化を持ちます。では、「結婚」については、どんな価値観を持っているのでしょうか。文化人類学者の椿原敦子氏と、中東・イスラム研究者の黒田賢治氏による共著書『「サトコとナダ」から考えるイスラム入門 ムスリムの生活・文化・歴史』から一部抜粋し、再構成してお届けします。

イスラム教の開祖・預言者ムハンマドも、結婚を推奨しています。数十年前まではエジプトやイランなどムスリム社会の若者にとって、人生最大の楽しみが結婚であったといっても過言ではありませんでした。

また、社会的にも結婚をして一人前と扱われることも少なくありません。筆者は学生結婚だったのですが、おかげで一人前と見なされ調査がしやすかったです。なぜ一人前かというと、今日のイスラム法にのっとって結婚するには大変な労力が必要だからです。 

「結婚」にまつわる独自のルール

まず婚姻するには相手が必要になります。今日でも特定の地域では少なくありませんが、婚姻の対象となる本人の親族同士あるいは親族の代理人による話し合いで、結婚相手を見つける方法がかつては一般的だったようです。当人たちが会うことも、話すこともなく結婚相手が決められていたのです。

もっとも、昔の日本でも会ったことのない人との結婚はありましたし、ヨーロッパでも長らく好きな人と結婚できる人は少数でした。

結婚は家と家を結びつけるという考え方は今の日本でも少なからずあります。ムスリム社会ではこの考え方は特に強く、結婚の段取りがどこかで失敗すれば花嫁・花婿の親族が面目を失って恥をかかされることになり、その怒りは、相手方の親族や結婚の当事者である自分の娘や息子に向けられます。

最近では学校や職場などで結婚相手と自由に出会う機会が増えたそうですが、女性の処女性とも結びつき婚前交渉には否定的意見が強いです。処女性と家の名誉が複雑に混じった地域では、「名誉殺人(強姦を含む婚前・婚外交渉を理由に、家族の名誉を汚したとして、当事者を殺害すること)」と呼ばれる風習が現代でも存在します。また地域的な伝統として、処女膜が「神聖」とされている地域も少なくありません。

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