イスラム教徒を悩ませる「愛」と「お金」の大問題 最悪の場合「牢屋に入れられる」リスクもある
親族が結婚を決めたり、一族の名誉のために身内を殺したりするのは、何もムスリムに限ったことではありませんし、すべてのムスリムがそうしているわけでもありません。しかし、「イスラムの伝統に従って」やっていると説明する人もいるのです。
ムスリム男性は、女性がキリスト教徒やユダヤ教徒などいわゆる啓典の民であっても結婚が可能ですが、ムスリム女性の場合は相手がムスリム男性でなければできません。また男性であっても、相手がムスリム女性であることが好まれ、相手が啓典の民でない場合には改宗を必要とします。
イランのような国を除いて、それぞれの国が定める婚姻の法律に従えば、ムスリム女性でも異教徒のパートナーと結婚することは可能です。相手がムスリムであることが求められるのは、あくまでイスラム法のもとで結婚する場合に限られています。
結婚に必要なもの
相手が見つかったら、いよいよ結婚の手続きを進める段階になります。日本では、婚姻届けを書いて役所に提出すれば婚姻契約が成立します。あとは戸籍謄本を用意したり、証人欄に書いてもらう人を探したりするだけでしょうか。イスラムの場合も契約を結ぶのですが、契約の前に準備があります。
まず用意しなければならないのは、「マフル」とよばれる婚資です。婚姻そのものに支払われる分と、離婚時に女性に支払われる分の2つに分かれていますが、両方の額を結婚前に決め、男性側から女性側に支払います。
結婚すると同時に離婚のことを考えておくというのは結婚に対して不誠実だと思われるかもしれませんが、離婚したときにお金がなかったら笑えません。特に仕事をしていない女性の場合は死活問題です。
この婚資の金額ですが、いくらと決まった額があるわけではありません。婚姻を結ぶそれぞれの家族の「家柄」に応じて決められてきました。コーラン1冊で、ということもよく言われる話です。