日本人が知らない「ハラル食品」基本中の基本 「豚肉を食べられる」イスラム教徒も存在する

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それでもなかには乙な飲酒文化が育まれている場合もあります。例えばトルコには、席に座っていると、給仕係が盆に載せて持ってきた前菜類を客が選んでアテにしながらメインを待つ、というスタイルのメイハネと呼ばれる「バル」もあります。

議論を呼ぶ「アルコール成分」問題

先ほど飲酒に関してはさまざまな解釈があるといいましたが、アルコール成分についても今日ではさまざまな解釈が生まれているようです。

飲酒とアルコール成分……どちらも同じ酒じゃないかと思うかもしれませんが、飲酒は「アルコール類を飲むこと」についての解釈です。一方、アルコール成分についての解釈というのは、「アルコール成分が含まれているとはどういうことか」や、「アルコール成分が含まれる可能性のある製品を使っていいか」ということです。

『「サトコとナダ』」から考えるイスラム入門 ムスリムの生活・文化・歴史』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

例えば、醬油や味噌のようなアルコール発酵を起こす製品や、製品の製造過程でアルコール成分が含まれる調味料の問題です。酩酊するほどに味噌や醬油をとる可能性は普通に考えればありえないのですが、成分にまでさかのぼって議論をするようです。また医療目的で肌を消毒する際に、アルコール消毒をしていいかというような問題も今日では扱われるようです。

伝統的な法学の議論では、飲酒とは別種の医療の問題として扱われてきたのですが、飲酒の問題と医療目的のアルコール使用の問題が混同されて扱われるようになっているようです。これは何もアルコールに限った話ではなく、豚由来の触媒酵素についても同じようなことがありました。

こういう議論はありますが、イスラム法に基づいて考えれば生命の危機に関わるのであれば、禁止されているものの使用も許されます。念のため補足しておきます。

椿原 敦子 文化人類学者

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つばきはら あつこ / Atsuko Tsuabkihara

1974年岐阜県生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(人間科学)。現在、龍谷大学社会学部講師。ムスリムを中心としたアメリカの移民コミュニティについての研究を行っている。著書に『グローバル都市を生きる人々――イラン人ディアスポラの民族誌』(春風社、2019年)など。

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黒田 賢治 中東・イスラム研究者

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くろだ けんじ / Kenji Kuroda

1982年奈良県生まれ。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科東南アジア地域研究専攻博士課程修了。博士(地域研究)。現在、国立民族学博物館現代中東地域研究拠点特任助教。現代イランを中心にムスリム社会の研究にたずさわる。

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