財前部長がそれでも「帝国重工」を辞めない理屈 大企業で我慢して働く意味とは何だろうか
池井戸潤氏の小説『下町ロケット』は、ドラマ化されて高い人気を得ています。2015年に続いて、昨年2018年にも新しいシリーズが放映され、今年のお正月には特別編も放送されました。
「ストーリーがワンパターンだ!」という批判はあるものの、見ていてスカッとする展開は単純に楽しめるのも事実です。中でも、阿部寛さん演じる主役以上に人気があるのが、吉川晃司さんが演ずる帝国重工の財前道生部長でしょう。筆者の周りでも男女を問わず、「財前部長、カッコいい!」という声がたくさんあります。
ドラマの詳しい解説は省きますが、大企業の幹部として、パートナーである中小企業の佃製作所に強い共感を感じながらも、所属する自分の組織には忠実であり、とはいいつつ時には上司とも対立しながら筋を通す姿が、元サラリーマンの私も憧れるところです。「自分もああなりたい」と思うと同時に、「自分の組織にあんな上司がいればいいのに……」と思う人が多いのもうなずけます。グレーヘアが似合う吉川さんのルックスも相まって、主役にも勝る人気を勝ち得ているのは非常に納得できます。
大企業とは「なかなか辞められないもの」なのか
ところが、財前部長の行動を見ていて、1つ不思議に思うことがあります。それは、会社にあそこまで嫌がらせをされて、「彼はなぜ会社を辞めないのか?」という素朴な疑問です。
社内ではかなり無理難題を押し付けられ、次期社長候補にも陰湿な嫌がらせを受けます。彼のように優秀で部下からも慕われているのであれば、さっさと辞表を叩きつけてライバル企業に行くなり、自分でベンチャーを立ち上げるなりしても、おそらく部下の何人かはついてくることでしょう。にもかかわらず、企業の中でじっと耐えているのはいったいどういうわけでしょうか。
「なんだかんだ言っても、大企業で収入が安定しているからだよ」「だって、彼には社長の後ろ盾があるからね」「ドラマなんだから、そのほうが面白いでしょう」など、考えられる理由はおそらくこんなところでしょう。でも、ドラマのキャラクターに対する独断ですが、筆者は少し違った見方をしています。
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