人気住宅街「南船橋」、昔は娯楽の中心地だった かつてのヘルスセンター、今は「ららぽーと」

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京葉線の開業で勢いが増すように思われたエンタメタウン・南船橋駅だったが、実際は京葉線の旅客線としての開業(1986年)を待つことなく1977年に船橋ヘルスセンターが閉園。跡地は千葉県を発展に導いた盟主・三井不動産が手掛ける大型商業施設「ららぽーと船橋ショッピングセンター」(現・ららぽーとTOKYO-BAY)へと生まれ変わる。1981年のことだ。

南船橋駅の高架下は、かつて船橋ヘルスセンターがあった「ららぽーとTOKYO-BAY」に続く通路になっている(筆者撮影)

ショッピングセンターの先駆けともいえる、ららぽーとの開業によって、南船橋駅はエンタメタウンから暮らしやすいベッドタウンへとシフトした。

自動車社会の到来を見据えて大型駐車場を完備させたららぽーとは、時代の波に乗って全国各地でも続々とオープンする。そして、同店は歳月を経た今でもららぽーと旗艦店として、ショッピングセンター界の雄として君臨する。

世界最大の屋内型スキー場が開業

1993年、三井不動産は南船橋駅前に世界最大の屋内型スキー場「ららぽーとスキードームSSAWS(ザウス)」をオープンさせた。京葉線の車窓から見える異様な構造物は、南船橋駅の新たなシンボルかつ新名所になった。

南船橋駅の南方には、IKEA(左)と三井不動産のロジスティクスパーク(右)がある(筆者撮影)

三井不動産が満を持してオープンさせた遊戯場だったが、2003年に残念ながら営業を終了。跡地はイケア(IKEA)の国内第1号店になっている。そのイケアの隣には、2016年に三井不動産が物流倉庫のロジスティクスパークを竣工した。ロジスティクスパークは拡張を続けており、2019年には3棟目の竣工を予定している。

京葉線が貨物専用線ではなく、旅客列車が走るほど沿線人口を増やしたのは千葉県と三井不動産の二人三脚による開発があったからだ。南船橋駅は、それを具現化した駅でもある。

その一方、弊害も忘れてはならない。工業県を目指して開発一直線に突き進んだ千葉県は、山を切り崩して埋め立て用の土砂を確保した。そのため、埋め立て工事が進められた60年代から70年代にかけて、千葉県内の山が次々と消える。それらの工事が土壌汚染や海洋汚染、森林破壊といった環境問題を引き起こした。

南船橋駅の南方には、三番瀬と呼ばれる干潟がある。この干潟も埋め立てられる予定だったが、計画が白紙撤回された。船橋市は環境保全活動に力を入れているが、50年もの歳月をかけて埋め立てられた京葉臨海工業地帯の環境問題は簡単に解決しない。

千葉県も東京湾の環境保全に取り組むものの、こうした環境保全の取り組みが効果をあげるまでには時間がかかる。容易に改善は望めない。

千葉県をはじめ、船橋市などが背負った十字架は重くのしかかったままだ。

小川 裕夫 フリーランスライター

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おがわ ひろお / Hiroo Ogawa

1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経てフリーランスに。都市計画や鉄道などを専門分野として取材執筆。著書に『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)、『私鉄特急の謎』(イースト新書Q)、『封印された東京の謎』(彩図社)、『東京王』(ぶんか社)など。

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