武蔵小杉の問題点は「街づくりを誰もやらない」 価値向上には戦略的ブランディングが必要だ

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それは、ある程度計画的に造られたとはいえ、各デベロッパーがそれぞれ工場跡地などに計画した開発なので、街が全体最適にはなっておらず、交通動線は急激に増えた人口をさばききれていません。鉄道駅が朝の時間帯大混雑している様子なども報道されていますし、膨大な新住民と古くから住んでいる旧住民がうまく交流できていない、といった課題もあります。

東急の武蔵小杉駅(撮影:梅谷秀司)

全国の自治体でも例がないくらい中原区の人口が増えているのはタワマン効果ですが、地域住民間のつながりが弱く、コミュニティーも希薄です。旧住民からも「これ以上、武蔵小杉にタワマンはいらない」という意見が自治体に出されていますが、偽らざる本音でしょう。

当の川崎市も自らの施策が大成功を収めたものの、想定外の事態に悩んでおり、各デベロッパーを集めて、なんとかエリアマネジメントをやってもらえないかというオファーを重ねてきました。

しかし、そこにたまたま開発用地があるから落下傘のように降りてきたマンションデベロッパーからすると、住戸販売が完了したら当該地域から当然去っていきたいわけで、いつまでもエリアマネジメント活動に付き合う考えは持っていません。

エリアマネジメントが必要だ

昨今、欧米のトレンドの影響もあって、日本でも「エリアマネジメント」という言葉がまちづくりの業界でバズワードになっています。

一言でいえば、民間セクターの団体が「地域の治安を維持するとともに、地域価値を高めていく一連の活動」のことを指します。特定の地域や街区単位で、道路や公園といった公共空間を含めて清掃や警備、修景事業、各種イベントなども行います。

「それは役所あるいは町内会の仕事でしょう?」というのが今までの常識かもしれません。しかし、公共空間を杓子定規に管理すると「みんなの公共空間」だったはずが禁止事項だらけで、「誰のためにもならない公共空間」になってしまうという問題が生じます。

それぞれの地域の実情に合った形で、公共空間の使い方を地域に委ね、もっと多様な使い方ができるように「開いて」いく。副次的には、公共空間の管理コストが下がり、場合によっては公共空間で一定のルールの中で行った収益事業の一部を還元してもらい、ケースによってはまったく税金を投入しなくても公共空間の維持や質的向上が図れる場合もあります。

エリアマネジメントの先進地である欧米では、「BID(Business Improvement District)」という制度が確立されています。BIDとはエリアマネジメントを行う特定のエリアに不動産を所有するオーナーから資金を出してもらって、それをベースに特定のエリアマネジメント団体がワンランク上の街並みづくりや治安維持、イベント展開などを行う制度です。

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