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武蔵小杉の問題点は「街づくりを誰もやらない」 価値向上には戦略的ブランディングが必要だ

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  • 東浦 亮典 東急株式会社 常務執行役員
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オーナーにとっては、税金に加えてBIDの負担金が取られるので反対する人もいると思われるかもしれません。しかしこの活動によって地域価値が上がり、さらに居住者、来街者、就業者の増加につながれば、最終的には土地、建物を保有し、商売をしているオーナーの元へと資金が還流するのです。

一般的に特定地域内でこうした活動を行おうとすると、ヒト、モノ、カネ、情報といったあらゆる経営資源に事欠くことがつねです。その中でも資金調達がいちばんの課題となります。残念ながら先立つものがないと、ワンランク上のまちづくりはできません。

30~40年後に問題噴出か

国内でも「日本版BID」を創設しようという機運が高まっており、国、自治体で議論が活発になっています。2018年6月には地域再生法の改正により、特定地域の3分の2以上の事業者の同意が取得できれば、市町村が活動費用に相当する資金を事業者から徴取して、エリアマネジメント団体に交付することができる「地域再生エリアマネジメント負担金制度」が創設されました。

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しかし、日本国内でエリアマネジメントの成功事例と言われているのは、「大手町・丸の内・有楽町地区(いわゆる大丸有)」のように大企業が構成要員で居住者がほぼ不在の都心エリア、札幌のように行政側の強力なサポートがある地域が中心で、特に郊外部で地域住民中心の場合はなかなか成功している事例がないのが実情です。

武蔵小杉にはすでに「NPO法人小杉駅周辺エリアマネジメント」という団体が組成されており、タワーマンション住民や地域団体のキーパーソンなどを中心に活発に活動をしています。とはいえ、新たに街の住人の数が増え続け、マンションエリアも拡大している武蔵小杉においては、まだ課題山積というところでしょう。

今は勢いのある武蔵小杉ですが、一気に出来上がった街ですので、あと30~40年も経過したらタワマンの建て替えや高齢化の問題なども表面化するでしょう。武蔵小杉の事例を見るにつけ、改めて開発にはスピードとバランスが大事だと感じます。

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